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にっぽんGメン


■公開:1948年

■制作:東横京都、大映

■企画:

■監督:松田定次

■助監:

■脚本:比佐芳武

■原作:

■撮影:

■美術:

■音楽:

■主演:片岡千恵蔵

■備考:

ネタバレあります


 時代劇スタア主演の本格捜査ドラマ。

 進駐軍命令で本格的な時代劇が撮れなかった時代。ちゃんばらスタアが慣れないハンドガンを振りまわして頑張った現代劇アクション映画。

 東映の「Gメンもの」は、警視庁が堂々と「後援」する本作品から、60年代に復活した「ギャング」シリーズのバイオレンスアクション路線を経て、番組開始当初は警視庁の体質批判が本線の一つだったテレビドラマへと変化していく息の長いシリーズ、と言えるかも。

 警視庁管内で連続して発生した強盗事件。

 犯人の見事なチームワークに、旧日本軍のセンスを感じた刑事の江藤・片岡千恵蔵は、上司の金森警部・大日方傳、加藤警部補・加東大介、白石・伊沢一郎らとともの特別捜査班の一員として極秘捜査を開始。

 盗品ルートを捜査していた白石は、元女形の古着商、村岡・原建策が身につけていた時計のシリアルナンバーを調べている最中に絞殺されてしまう。奇しくも誕生日に殺された同僚の復讐に燃えた江藤はドヤ街に潜入するが拾ってきたのは戦災孤児のみ。

 被害者の証言から、仲間の一人が「参謀」と呼ばれていたことをつきとめた捜査班は、名士と評判の曾我部・鈴木伝明が経営しているバーが彼の軍隊時代の部下を集めた強盗団の本拠地であることを突き止めた。

 てなわけで、ストーリーは純然たる正統派刑事ドラマだ。犯人が盗品を自分で付けてるってのは間抜けだが、モノが無かった時代のなせるわざってことだね。

 殉職した刑事の母親・杉村春子の「公僕ですもの、命は社会のために捧げます」という台詞が泣かせる。「公僕」なんて言葉、久しぶりに聞いちゃったよ。さすが「後援・警視庁」、かつ、こういう精神が尊ばれた時世がしのばれるところだ。

 出演者は片岡千恵蔵を含む全員が驚くほど若いので最初は誰が誰やらさっぱりわからん。伊沢一郎なんて「特別起動捜査隊」の物分りのよさそうな熟年刑事って印象が強いから、本作品のようなキリリっとした精悍な二枚目なんて想像できないもん。ついでに、戦後の娯楽時代劇ではもっぱら、ひょうきんなオジさんだった杉狂児も、強盗団の戸上城太郎に銃撃されて瀕死になりつつ同じく一味の山口勇に手錠で繋がれて引きづりまわされると言うアクションに体当たりしてカッコイイぞ。

 潰れた工場の地下室に悪党一味を追い詰めた片岡千恵蔵が、屋根を破って突入。鈴木伝明と乱闘するんだがこれがすごい迫力。香港映画のアクロバティックなアクションや、いかにも段取りばっちりの殺陣を見なれていると、コノヤロー精神大爆発のぶん回しパンチの応酬はただただ粗暴でハラハラする。

 戦前の名作「路上の霊魂」でヨーロッパ映画の二枚目風だった鈴木伝明が歳くって色悪になって出て来た時はちょっとビックリ。同じく戦前から活躍していたスカーフェイスの二枚目、大日方傳は知性派のナイスミドルになって復活。

 ほかには訓示に凄みが効いている刑事部長に月形龍之介、新聞記者役で「大学の若旦那」の藤井貢とその実弟で顔が良く似ているの船津進が出ている。盗品をさばく街のゴロツキ役にめちゃくちゃ若い沼田曜一。女優さんはバーのシーンに美ち奴、ほかに市川春代

 この作品の製作当時、東横映画(後、東横、大泉、東京映画配給の3社合併により東映になる)は大映京都第二撮影所(現・東映京都撮影所)と片岡千恵蔵を大映から借用して製作していた。

 「にっぽんGメン」はシリーズ化され、以後、マキノ光雄のプロデュースで「〜難船崎の血闘」「〜不敵なる逆襲」等が製作され、1956年にメンバーを一新して「特別武装班出動」が、さらに60年代に「ギャング対Gメン」シリーズで復活した。

2001年07月15日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-06-10