続 悪名 |
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■公開:1961年 |
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故郷の八尾に戻った朝吉・勝新太郎はお絹・中村玉緒を頑固オヤジ・荒木忍に紹介して気に入られ、二人で野良仕事をするようになる。そこへモートルの貞・田宮二郎が訪ねてきて、かつての親分、吉岡・山茶花究がおちぶれていることを知った朝吉は責任を感じて見舞いに行く。 貞の弟分の河太郎・南都雄二の女房が源八・上田吉二郎にかどわかされたので朝吉と貞は源八をしめあげ、源八が松島一家の長五郎・山路義人に頼ると今度は吉岡の敵討ちも兼ねて長五郎をボコボコにしてしまう。 腕と度胸を松島の元締・中村鴈治郎に買われた朝吉は松島一家を押し付けられてしまう。やくざな生活をしていても、根っからやくざが嫌いな朝吉だったが、組の若い衆は兄貴格の勝・須賀不二男をはじめとして気のイイ奴ばかりだったので見捨てられず、なんとか面倒をみていたが、それがまたやたらと金がかかるのだった。 朝吉が難波新地でこき使われていた女郎たちを助けたので、ここを縄張としているカポネの親分・藤山浩二と対立、ところが朝吉が自分に服従しないとわかった松島の元締めはあっさりと朝吉を見殺しにしようとした。 そこへ琴糸・水谷良重が訪ねてきた。琴糸は朝吉とお絹の幸せを願って因島に好きな人がいると言って身を引く。朝吉は急場を女親分のイト・浪花千栄子の助力でしのぐことができた。 カポネに付狙われ始めた朝吉に召集礼状が届く。残された貞は雨の中で殺された。朝吉はお絹を置いて戦地へ出征していった。 「悪名」は「続悪名」と2作限りと予定されていたようで、貞が死ぬばかりでなく朝吉にも死を予感させるような終わりかたである。が、あまりにもヒットしてしまったので貞は実弟の(うりふたつの)清次としてゾンビのように蘇生し、その後、トータル14作品の「悪名シリーズ」となった。 いやー嫁さん(中村玉緒)だけでなく、お舅さん(中村鴈治郎)まで登場とはねえ、朝吉、思いっきりのピーンチ!花嫁のパパったらスッゲー婿殿に厳しいんだな、コレが。ってそりゃ実生活の話なんだがそういうところを何気に反映させてくれるのは見るほうとしては楽しいのでグーだ。 ついでだが、このシリーズが人気絶頂だったころの週刊誌に面白い記事が載っていた。撮影所ではよくマージャンが行われていたそうだが、そこで抜群に弱かったのが田宮二郎だったそうだ。勝新太郎はその理由として「田宮はぼやきマージャンだから弱い」と言っている。なーんだ田宮さんったらモートルの貞そのまんまじゃん?って感じで大笑い。 黒澤明はこの人と仕事をするために大映へ行って「羅生門」を作った。それが本作品の撮影・宮川一夫である。溝口健二、市川崑、稲垣浩、そうそうたる面子がみな宮川カメラマンによって名匠と呼ばれる身分になれたんだと、あえて言ってもいいんじゃないか? 撮影のスケジュールが押してしまい貞が殺されるシーンだけが残ってしまった。もうロケする時間もなくなったとき、困り果てた田中徳三は宮川一夫に相談した。宮川一夫は「なんとかしましょう」と言って、あの雨の中の刺殺シーンを撮影したのである。場所は撮影所裏の駐車場、コンクリートの床と空だけが背景に見える、印象的なシーンはこうして生まれたわけだから何が幸いするかわかんない。 (2001年04月26日) 【追記】 2003/06/08:「なんとかしましょう」のエピソードはNHKの朝ドラ「オードリー」にも流用されております。このドラマには東映の撮影所に「大魔神」の像が飾ってあったり、後にCMディレクターの浅葉克己がウイスキーのCMに宮川一夫を起用したときの話も出てくるので機会があったら見ましょう。 |
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※本文中敬称略 |
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file updated : 2003-06-08