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四人目の淑女


■公開:1948年
■制作:松竹
■監督:渋谷実
■助監:
■脚本:新藤兼人
■原作:
■撮影:
■美術:
■音楽:服部良一
■主演:森雅之
■備考:


 渋谷実の「舞踏会の手帖」。

 この映画は初期のキャスティングからだいぶ変更されているようだ。当初、予定されていたのは「吉田和夫」には上原謙、「孝子」は高杉早苗、「古川」は宇野重吉、と記録にある。

 音大の同期生、吉田・森雅之、佳王子・浜田百合子、時代・三浦光子、好江・月丘夢路、孝子・木暮実千代は、吉田の出征を期に別れ別れになる。

 終戦後、復員してきた吉田は、没落華族の佳王子が戦争成金の古川・笠智衆と金目当てに婚約したことを知る。時代はダンスホールの歌手でちんぴらのヒモがいた。オペラ歌手として成功した好江のところを訪ねた吉田は劇場支配人・殿山泰司にたかりと間違われて追い返された。

 失意の吉田が最後に訪ねた孝子は古川をパトロンにしてナイトクラブを経営していた。孝子は吉田を立派な紳士に仕立てて金持ちに見せかけ、もう一度、三人を訪ねるように言った。

 戦後の混乱期、世の中の価値観が万事「金」になってしまったことに深く傷ついた吉田が最後に、死の床にある好江(実は孝子)の純粋な真心に出会い、生きる希望を見出す。

 当時、37歳で「悩める青年」しちゃう森雅之がそれなりにサマになってるところが凄い。みすぼらしい復員服から、青年実業家に変身したとたんの色男ぶり、金の力でとたんに態度をかえる淑女たちにそそぐニヒルな視線が秀逸。生来の品の良さと堂々たる大芝居で客を納得させてしまう力ワザだ。

 ストーリーは大甘で運びもかったるいが、それもまあ時代っちゃあ時代なんだからしたかないのかも。

 ナイトクラブのマダムをジャンボな華やかさで演じる木暮実千代が素晴らしい。こういう度胸と気風のいい女優、当然だが趣味の問題は多少あるとしても美貌の持ち主、こういう華のある女優さんってのは今はなかなかいないので稀少だ。

 強欲な成金という下衆な役どころに、見たまんま善人系の笠智衆ってのは珍しいけど、ちょっとなあ。これは当初の宇野重吉のほうが数倍凄みが出ただろうからミスキャストっしょ?事情はともかく、さ。

 「わが生涯の輝ける日」のヒットを受けての森雅之の起用だろうから、当然、濃厚なキスシーンもあり。当時、民芸に所属していたせいもあるのか、ほかに業突く張りどもからヒロインの誠意を守り抜く正義派の弁護士役で同じ民芸の清水将夫が出ている。

2001年04月08日

【追記】

※本文中敬称略


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file updated : 2003-06-07