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■公開:1988年
■制作:ディレクターズカンパニー
■製作総指揮:伊丹十三
■監督:黒沢清
■助監:
■脚本:黒沢清
■原作:
■撮影:
■美術:ディック・スミス(特殊メイク)
■音楽:
■主演:山城新伍
■備考:


 筆者が一番最初にクリティカルヒットされたオカルト映画は原作のリチャード・マシスンが脚本、ジョン・ハフの監督、ロディー・マクドゥール主演で1973年に公開された「ヘルハウス」である。あの屋敷のショットといい、一人づつ「消えていく」って真綿で首をしめるような陰湿さがとにかく怖かった。

 大林宣彦の「HOUSE」はファンタジー系だったが、本作品はガチンコのセメント系ホラー。

 著名なフレスコ画家、間宮の屋敷を訪問する独立プロの取材クルー、プロデューサの星野・山城新伍、ディレクターの早川・宮本信子、リポーターのアスカ・黒田福美、ロケバス運転手兼スタッフの田口・古館伊知郎、それに母親を亡くした星野の娘、エミ・NOKKO(レベッカ)

 屋敷には不気味なウワサがあった。自分の子供を焼却炉で事故死させてしまった間宮夫人が、悲しみのあまり近隣住民の子供を誘拐しては焼却炉で燃やしていたと言うのだ。怒った住民に追い詰められた間宮夫人も自ら焼却炉へ飛び込んで非業の死を遂げた。

 クルーが発見した屋敷の書斎にあったフレスコ画には、我が子の誕生から死までの物語が描かれていた。霊に憑依されたアスカが、半焼けになった赤ん坊の遺体が入った棺を掘り返した。

 屋敷の秘密を教えてくれたガソリンスタンドの主人、山村・伊丹十三はただちに立ち退くように言ったが、星野は信じない。やがて田口が殺され、アスカも屋敷の影に潜む間宮夫人の怨霊に襲われた。

 間宮夫人の怨霊はエミを焼却炉に誘い込んだ。

 人の子をとって食っていた夜叉が仏の導きで、子を失った親の心の悲しさに気づき改心して出産と子供の守り神になった鬼子母神(ハーリーティ)伝説をベースにしたのは、キリスト教のセンスがない日本発のオカルト映画にするための秀逸なアイデア。

 怪物の特殊メイクアップには「エクソシスト」のディック・スミスがあたっている。怪物に焼かれて死ぬ被害者のグロテスクさや、姿をあらわした怨霊の凄まじさをこれでもかと伝えてくれる。それは、ラストシーンの美しさのために準備されたプロローグであるのだが。

 こういうビジュアル優先の映画に、一昔前の役者である山城新伍の「作りこみ」はどうもテンポがかみ合わなくて頂けなかった。どーせ現場でわがまま放題だったろうと思うのはエンディングで明白、っつーか、あそこで死んでれば少しは映画にフィットしたのにねー。

2001年03月21日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16