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兜 KABUTO


■公開:1990年
■制作:米国映画
■監督:ゴードン・へスラー
■助監:
■脚本:
■原作:
■撮影:
■美術:
■音楽:
■主演:ショー・コスギ
■備考:時代劇のグローバル化はこの映画に学べ!


 ショー・コスギはハリウッド(ってもテレフィーチャーが多いらしいが)で成功した数少ない日本人俳優の一人だ。こういう人をただのキワモノみたいに扱ってるのは日本映画産業にとってはマイナスなんだと、この映画を見て思った。 

関ヶ原の合戦に苦戦した徳川家康・三船敏郎は、家臣の前田・ショー・コスギに、スペインへ行って優秀な銃器を手に入れてくるように命じる。家康は、豊臣方の落武者に命を狙われている長男の頼宗・ケイン・コスギも同行させた。

 謎の宣教師や敵方の暗殺者を振り切ってやっと謁見したスペインの偉い人・クリストファ・リーから日本国内でのみ使用してよろしいと許可を得て連射砲と銃器を得た前田は、嫌味な貴族が連れていた美女に一目ぼれ。

 貴族はいろいろと嫌がらせをし、トルコの大臣・ノーマン・ロイドをそそのかして前田たちを襲い武器と美女を取り上げてしまう。絶体絶命の危機を武士道精神で乗りきり、無事に帰国の途につくのであった。

 この映画は日本映画のグローバル化という観点において素晴らしい教科書になると思うぞ。欧米人が見たい「日本」がきちんと描かれているし、日本人から見たら、そら多少、史実に反してるかもしれないがそれよりも映画的に上手いフィクションの盛り上げに感心したほうがいい。

 つまりこれはプロデューサーのショー・コスギが忍者を映画にするにあたりかなり「時代劇」と「歴史」を勉強しただろうし、それを欧米人ウケ、というかわかってもらえる映画にするための工夫もたくさんしただろうということが想像できるわけで、そうした経験が十分に生かされているなーと分かるのだ。

 宣教師が正体バレそうになったときの言い逃れや、平然と約束を反故にするトルコの大将、そう言えばこの人「レイダース・失われたアーク」にも出てた、とにかくシナリオがすごくよくできてると思う。

 水に浮かべた花が刀に触れただけで斬れてしまうなんてまるで「子連れ狼」みたいだし、石田三成のエピソードの使い方も日本人が見たら「あんた敵方の子だったんかい!」とびっくりするが、ま、いいか、って感じだし。

 自分の息子を主君の身代わりにするというあたりきちんと泣かせどころも心得ていて上手いし、死んだ息子への深い愛情で異国人の船長と心を通わすエピソード、金髪美女とのプラトニックなラブと親子の再会なんかもあって、エピソードてんこ盛りな気もするけど、ダラダラするよかずーっとイイ。

 いざチャンバラのところだけはちょっと忍者アクションだったが、まあ外人さん相手にちゃんとした殺陣教えるよりは段取りちゃっちゃっと教えてショー・コスギがゆっくり動いてやればいいんだからヨシとしよう、てな感じ。

 クリストファ・リーと三船敏郎っていう世界的に売れてるビッグネームを押さえてるところもグー。

2001年02月25日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16