竜馬暗殺 |
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■公開:1974年 |
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坂本竜馬・原田芳雄が暗殺されるまでの最後の数日間の物語。なーんていうかこれは役者のキャラクターと役柄が最高にマッチングした好例じゃないかと思う。 それまでの坂本竜馬と言えば、NHK大河ドラマ「竜馬が行く」は北大路欣也、東宝の「幕末」は萬屋錦之介、いわゆる時代劇映画のサラブレッドが演じた良くも悪くもドラマチックなヒーローだったわけで、この原田芳雄のように女に夜這いかけるわ、ケツモロでドブネズミのように逃げ回るわ、っていう下世話で汗臭いのとは全然違ってた。 同じ年の大河ドラマ「勝海舟」に藤岡弘の坂本竜馬が結構、近いもんがあったけどあーまで汚くなかったし、エキセントリックでもなくて、なんか好人物って感じでね、ま、いわゆる大河系のキャラだったし。 商家の土蔵に隠れた竜馬は、隣家の質屋・田中春男に囲われている女、はん・中川梨絵と知り合う。もともとは同士だったけど今じゃー敵味方の中岡慎太郎・石橋蓮司、はんの弟で薩摩に雇われた刺客の右太・松田優作、日本全国を敵にまわした竜馬はたびたび襲撃を受ける。 映画ってのはたとえ時代劇でも、作られた時代を反映するもの。原田芳雄は「反逆のメロディー」で「新宿アウトロー・ぶっとばせ」の「野良猫ロック」てなわけで自身1970年代を体現した俳優の一人だから、モノクロの画面に描かれる猥雑なエネルギーこそがこの映画のメインテーマ。1974年と言えば第1次石油不況、ベトナム戦争が最高の泥沼化してたときで、三菱・三井爆破事件が起きてる。 社会全体の屈折をスクリーンの隅々にまで描いた本作品には、下層庶民のバイタリティーを源泉に圧政権力への抵抗が生んだ一種の倒錯舞踊である「ええじゃないか」が重要なアイテムとして登場する。坂本竜馬が盟友の中岡慎太郎に会うために、「田園に死す」系メイクに女装でええじゃないかに紛れ込むシーンは、そうしたテロリストたちも革命家も時代の渦の中ではただの泡のようなものだと言っている。 右太を演じた松田優作は竜馬自身の説明もあるが、最初は岡田以蔵かと思ってしまったが、腕一本を頼りのフリーターのヒットマンというのはこの時代、いっぱいいたんだろうね。その右太も泡の一粒に過ぎなかった。 あえて暗殺の舞台にしつらえられた罠の中に平然と入っていくのは、竜馬の思想があまりにも壮大になりすぎて自分自身すら、タイシタコトない存在になってしまったと言うことなのか。結局、史実どおりに坂本竜馬と中岡慎太郎は暗殺されるのだが、二人がほぼ無抵抗だった理由もきちんと説明されている。 滅び去る武士たちを見つめるはんの目が、すべてを知っているはずの彼女が、何もかも見届けて姿を消す。戦場の兵士が夢見るものはいつでも女神、はんはそういう存在であった。 ほかに、大久保利通・田村亮、はんに迫って殺される新撰組の富田三郎・粟津號、竜馬のパシリの藤吉・野呂圭介、竜馬の元彼女かつ本命は中岡慎太郎という田舎娘の妙・桃井かおり、岩倉具視・山谷初男、などが出演。 (2001年03月18日) 【追記】 |
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※本文中敬称略 |
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file updated : 2003-05-16