民暴の帝王 |
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■公開:1993年 |
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民事介入暴力って言えば、示談屋・あたり屋・整理屋・債権取立て屋・痴情に絡む脅迫・パクリ屋・サルベージ屋・占有屋・執行妨害・地上げ屋・総会屋、などなど数え上げればキリがない。 そんな役どころに「旭さんを使うなんて許さないわ!と、思っているかもしれないが、よーく考えてみればだよ、職権乱用でテメエの女房の恐喝事件をもみ消したり、税金使って競走馬買って女の名前つけたりするカタギが横行している現代ならば、そんな奴らのほうがよっぽどマトモかもしれない。 違法で自分らがヤクザだと自覚してるからね。 生活は安定してるけど、政府の理不尽な(と思われてしまうところがすでに難)ピンハネにより、もらいが少ないサラリーマンから見れば、この映画の主人公は十分にヒーローなんじゃないか?とそこんところに目をつけたのが本作品なわけだ。 経済やくざ業界の超大物、東京の大和会の江田・小林旭は市中銀行の合併に絡むドブさらいを引き受けた。大阪の淀商の社主、茂木・中尾彬は反対派の弁護士・清水宏治(宏:アテ字です)を運送会社の有働・長門裕之と結託して罠にはめる。茂木は有働の紹介で江田に急接近する。 淀商との付き合いが古く、茂木の愛人・二の宮さよ子の実兄である、九頭龍組の別役・渡瀬恒彦は当然面白くなく、組長狙撃に端を発した抗争事件の仲介役が江田に決まったことを本部長の灰原・菅原文太から聞いた別役は激怒する。 武闘派の古いヤクザと、知性派の経済ヤクザの対決というのはかなり時代遅れの構図だが、さらに父性の復権、男らしさとは?という説教スパイスも効かせてしまうところが凄い。こんな映画作って見る人が、当時でさえ、何人いたと思ったのだろうか? 江田は、自分の身代わりになった男の娘・七瀬なつみを秘書として猫っかわいがりしてて実はその娘、ド淫乱で運転手・坂上忍やあまつさえ渡瀬恒彦とさえヤリたがるという、そんなふしだらな娘を目の前にして仮親たる小林旭としては大激怒!売春を援助交際と言い代えるような馬鹿娘たちに一撃を食らわす!の図。 一度は見限った娘のところへたずねていく江田の妻・桜町弘子の母親の情。おおーっとここで「総長賭博」思い出させよーってワケ?つまりこの映画のターゲット市場はいまどきの客じゃなくて、往年の客、なのね。 そんな客のニーズに最も応えたのは。制作当時、すでに還暦でありながら髪の毛ちょっと染めただけでいまだに「広能」でイケてた菅原文太。 地上げの末に殺される気の毒な民間人・成瀬正孝、田舎ヤクザの親分・岩尾正隆、中堅ヤクザの親分・品川隆二、渡瀬恒彦の片腕・野口貴史、文太の使者・曽根晴美、旭の参謀役に川地民夫を何気にインサートして日活ファンのハートもしっかりゲット、で、トドメは相変わらず座ってお茶飲んでるだけでサマになる大親分・丹波哲郎。 まるで東映ヤクザ映画のレクイエムみたいな感じなんだけど、それにふさわしい顔ぶれは往年のファンには懐かしい。でも、懐かしいだけで映画作ったら駄目だ。 (2001年02月25日) 【追記】 |
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※本文中敬称略 |
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file updated : 2003-05-16