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蝶々失踪事件


■公開:1947年
■制作:大映
■監督:久松静児
■助監:
■脚本:高岩肇
■原作:横溝正史
■撮影:
■美術:
■音楽:
■主演:岡譲司
■備考:


 ミステリー小説を映画化するのは難しい。見えそうで見えないようにしているものを見えるようにしなきゃいけないからね。まさか真犯人にモザイクかけるわけにもいかないし。

 人気絶頂の歌手・三益愛子は有力なパトロンによって自分の劇団を持っている。

 大阪公演を終えて東京へ向かう途中、歌手は失踪する。警察も出動し必死の捜索が行われている最中、東京に先に到着していたオーケストラのコントラバスのケースの中から歌手の死体が発見される。

 あんまり詳しくストーリーを追うのはミステリー映画には御法度。ネタばらしは極刑に値する(とか言いつつしょっちゅう筆者はバラしまくるが)。

 容疑者&冤罪被害者は歌手と昔付き合ったことのあるパトロン、指揮者、演出家、マネージャー、若手の歌手、付き人など多数登場する。大体が、こういう映画は怪しそうな奴から順番に除外されていくわけで、そのあたりをサクサクっと謎解きするのが敏腕警部・岡譲司

 後の母物の女王・三益愛子が華麗な男性遍歴あり、隠し子ありという波乱万丈なバタ臭い女性を演るのが意外な感じだが、まあ昔は誰でも若かりし頃というのはあったって事だな。

 警部がしょっちゅうパイプをくゆらせているのでちょっと見はシャーロック・ホームズで、岡譲司もそのあたりをギンギンに意識したような見得の切りかたをするのが面白い。彼の腰ぎんちゃくはトップ屋・伊沢一郎でこれは差し詰めワトスン教授というところ。

 謎解きは凝ってないので犯人は一発で判る。それじゃツマンナイなーって人には勧めないけども。ここまで古いと日本映画かどうかも怪しい感じになるから、外国映画だとでも思えばそれなりにイイかも。

 それに有力な候補者は映画の序盤で二人に絞られるし、もっと言えば最初っから判っちゃうし。こういうシンプルなミステリーは、いかに冤罪候補者がもっともらしい理由で疑われるか?だけ見てればいい。

 「刑事コロンボ」は最初に犯人バラす方式で結構楽しめたでしょ?どこでボロ出すのかなー?って、この映画もそんな按配で見てればいいと思う。

 岡譲司は戦後、しばらくしてテレビドラマ「月曜日の秘密」で金田一耕助をやったので横溝正史には縁の深い人。クラシカルなミステリー映画。

2001年02月10日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16