悪徳の栄え |
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■公開:1988年 |
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清水「こうじ」の「こう」はアテ字です、文句はマイクロソフトに言いましょう。 二・ニ・六事件の前夜。不知火侯爵・清水宏治の家には劇場が併設されている。公爵は夜な夜な、女伯爵・米沢美知子、金貸しを生業とする財閥・石橋蓮司、裁判長・寺田農らが、贅を尽くした食事と互いの悪徳自慢で盛り上がっていた。 侯爵はマルキ・ド・サドの「ジュリエットの物語」を妻・李星蘭と犯罪者の男・牧野公昭に演じさせていた。彼らの目的は自分で無い何者かに化身するということ。侯爵はある晩、男を呼び出して妻を犯すように命じる。もちろん、その一部始終は、侯爵の賓客が覗き見をするのである。 男は侯爵の命令で殺人をした。しかし侯爵は警察の関係者・原保美に圧力をかけ事件が表沙汰にならないようにする。 その晩から、妻は男と密会するようになり、侯爵の演出に反抗するような態度をとり始める。男と妻の情愛がモノホンだとわかったとたん、女侯爵は召使の女たちをイジメて鬱憤晴らし。侯爵の嫉妬はますます増大していく。 劇場で殺人事件が起きる。侯爵の家には反乱将校・佐野史郎が支持を求めて訪ねてきた。男は殺人犯として逮捕された。妻の懇願で男を助けた侯爵は抱き合う二人をサーベルで刺殺した。 暗いな。なにって画面が、さ。実相寺昭雄監督の映画は概ね、ろうそくの明かりでやっと見える程度の照度である。 昔の子供、またはいい年こいた怪獣博士にとってこの監督は「ウルトラマン」でシーボーズに尻もちをつかせ、スカイドンでハヤタをスプーンで変身させようとし、ガマクジラで桜井浩子を怪獣呼ばわりし、続く「ウルトラセブン」ではウルトラ警備隊員を発狂させたり、宇宙人をちゃぶ台の前に座らせた、飛び道具専門の監督である。 こうしてサブタイトルとかがスラスラ出てくるのってどうよ? この映画は清水宏治のためにある。と、言っても過言で無い。実質上の主役だ。実相寺と清水宏治、呼び合う魂!だな。 冒頭、詰め物をされた鶉の丸焼きを手掴みで貪り食い、半裸というかエプロンだけで素っ裸というノーパンしゃぶしゃぶ嬢を先取りしたようなエロな下女たちをなぶり者にする、ハイソな人々のデカダンスな悪趣味はこの監督の真骨頂。 マルキ・ド・サドはパゾリーニの「ソドムの市」でもわかるように裸、裸、裸のオンパレード。お食事は蛆虫、ご褒美は鞭、嬉しいことがあったら浣腸、、う、なんだかこう書いてるだけで吐きそうな、ってつまりそういうビジュアル的には危ない、アブナイの王様で、そんなん日本でやるなら実相寺だろうなーと思ってたのでこの映画を見ても妙に納得してしまった。 あっちがファシズムならこっちは二・ニ・六。大正末期から昭和の初期にかけて日本の文化が爛熟を超過して腐敗しかかったその刹那、ラストシーンは廃墟のようなところに延々とならぶロウソクが来るべき究極の破壊を暗示させる。 やはり実相寺には大正ロマンが似合う、ただし悪趣味だ。 (2001年02月17日) 【追記】 |
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※本文中敬称略 |
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file updated : 2003-05-16