怪談 おとし穴 |
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■公開:1968年 |
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この頃の成田三樹夫のヘアスタイルって「スタートレック」のスポック(レナード・ニモイが演じたバルカン星人)に似とらんか?それはさておき、戦後の日本映画を代表する色悪の一人、成田三樹夫の主演映画は怪談である。 苦学の末にさる中堅企業の社長・見明凡太朗の秘書にまで成り上がった倉本・成田三樹夫には、タイピストの悦子・渚まゆみという恋人がいた。 社長令嬢・三条魔子が倉本にぞっこんで結婚まで考えていることを知った悦子は「別れてあげるから社長令嬢とも結婚しないで」と、倉本に懇願した。当然、成田三樹夫はこれを聞き入れるわけがなく、ダラダラと返事を先延ばし。 ついにキレた(前からキレてるが)悦子は「結婚なんてさせないわ!私に妻の座をちょうだい!」とえらい剣幕で、おまけに妊娠していると聞かされた倉本は悦子を殺してパイプシャフトに死体をポイ捨て。倉本が社長令嬢と結婚し部長に出世した頃、悦子の兄・船越英二が倉本を訪ねてきた。 痴情怨恨がらみの殺人事件。激安の三文サスペンスかと思いきや、これがどっこいナカナカ怖い。 怖いってつまり渚まゆみだ。 筆者が最初に渚まゆみを観たのは「現代やくざ・人斬り与太」で、下積み時代を支えてやった菅原文太に捨てられそうになり、賭場まで怒鳴り込み文太にボコボコにされ、心配して迎えにきた文太を出刃包丁で出迎えた姿である。 そんな彼女は、本作品でも恋人のために体を投げ出すような一途な、と言うか、ブリンカーとシャドーロールつけて前しか見えなくなったサラブレッドのような状態で、成田三樹夫をこれでもかと追い詰める。 ただ行方不明になったんじゃあ自分に火の粉がかかると思った成田三樹夫は、防火シャッターに渚まゆみを激突させてパーになったと前フリ後、殺してるわけだ。さすがスポック頭は回転が速い。 いよいよ主人公の周りに幽霊を信じ込ませるような様々な現象が起こってきて、成田三樹夫はノイローゼになる。本作品がリアルな恐怖感をかもし出すのは、画面に登場する幽霊が超常現象ではなく、人間の罪悪感によるものである、というところ。 同じ人殺しでも被害者の断末魔を見た犯人は逮捕されると安堵したような顔をするものらしい。夢枕に被害者が立って怖くて自首した、という例もかなりあるそうだ。その点、よりによって渚まゆみのソレを見てしまった成田三樹夫が悪夢にうなされぬはずがない。 それに兄貴は「怪談・蚊喰鳥」で幽霊按摩だった船越英二だし。 たとえば「四谷怪談」や「番長皿屋敷」観ても今はあんまり怖くないのよね。古い立派なお屋敷も井戸もお堀も戸板も身近にないから。 オフィスビルというのは階段で全フロアがつながっているので思わぬところから音がしたり、というのはよく経験することだ。誰もいない部屋からタイプの音がした、、なんて現実にいくらでも転がってる怪談話であるから、リアルに怖い。 オチは「人を呪わば穴ふたつ」。 主人公の部下・片山明彦は島耕二監督の息子、「風の又三郎」もすっかり大人てか、イイトシしたオヤジ。 (2001年01月13日) 【追記】 |
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※本文中敬称略 |
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file updated : 2003-05-16