「日本映画の感想文」のトップページへ

「サイトマップ」へ


源氏物語 浮舟


■公開:1951年
■制作:大映
■監督:衣笠貞之助
■助監:
■脚本:八尋不二
■原作:北条秀司
■撮影:
■美術:
■音楽:
■主演:長谷川一夫
■備考:


 後に長谷川一夫の舞台公演に出演した山本富士子は「映画と違ってアップがないから」と、気楽に化粧をして出たが、終わった後で長谷川一夫に呼ばれ「私の舞台を観に来るお客様はみんなオペラグラスを持ってくるんだからちゃんと化粧をしてもらわないと困る」と、怒られたそうだ。

 さすが美の求道者・長谷川一夫の面目躍如、というエピソード。

 光源氏の嫡男、薫宮・長谷川一夫は母の葬儀を終え、墓参の帰り、山道を駆け回って野ウサギを素手でゲットしてしまう野性的な姫、浮舟・山本富士子に出会う。浮舟は中の君の妹で、都デビューをするために母親・三益愛子が連れてきたのだった。

 帝の皇子、匂宮・市川雷蔵には中の君・乙羽信子という正室がいたが、根っからの浮気性であっちこっちでつまみ食いしまくりの困った奴。

 正座で足がしびれてずっこけるような浮舟の魅力にイチコロとなった薫宮は彼女に、亡き恋人の面影を見てプラトニックラブを告白する。ところが同時に匂宮も彼女にご執心になってしまう。一応、皇子なので遠慮しつつも薫宮は匂宮を説教、しかし匂宮はかまわず浮舟に大接近。

 匂宮はほかにも小篠・藤間紫なんかとも堂々と浮気、ところがそんなラブアフェアの度が過ぎて、女房の北の方・阿井美千子をネコババされた右近・夏目俊二が匂宮の暗殺未遂の後、女房を殺し、薫宮のところで自害するという事件が発生、さすがのプレイボーイ、匂宮も反省するかと思いきや「それくらいのことで死ぬなんて馬鹿じゃん?」な反応だったので、正正室の中の宮は浮舟との仲が不安でならない。

 匂宮の父親、帝・中村鴈治郎は親馬鹿なので薫宮を強引に結婚させようする。匂宮はラッキー!とばかりに浮舟のところへ行き、薫宮の結婚話がゴーしたと嘘をつき、狼狽した浮舟を手ごめに。

 結婚=出世をぶっちぎった薫宮は無職になって浮舟のところへ行くが、身分が下がった薫宮なんてダメだしーと思った母親により浮舟が匂宮に抱かれたと知って大ショック!怒った薫宮に絶望した浮舟は自殺してしまう。

 あらあら雷蔵さんったら悪役じゃないのー。そりゃあまあ長谷川先生の手前ですからーしかたないですけどー、でも、なんかノリノリな気がする、と言うか憎めないわ(贔屓目です)。

 ビジュアル的に女はともかく男のお歯黒ってかなり気持ちわるいっ!いくら異星人(みたいに綺麗な)・長谷川一夫でも。いわゆる平安朝のお化粧、自前の眉毛を剃って(鬢で潰してるんだけど)ぼかし眉毛のアレ、近代的な山本富士子の顔にはちょっと、ね。素地で彫が深い人にはダメですねーあのメイクは。

 長谷川一夫は1951年の「源氏物語」の続編、という感じで光源氏の息子を演じる。結局、この人、源氏の老けたところは全然やらなかったわけだね、この時点では。

 ヒロイン浮舟の山本富士子は相思相愛な(?)衣笠監督の掌でたのしそうに元気に飛び回っていた。

 本作品はカラーでセットも衣装もとにかく綺麗。リアリズム時代劇ならまだしも、こういう絢爛豪華な時代劇っていうのは美術費が天文学的数字になるだろうね、きっと。そういうところを観るだけでも価値ある作品。

2001年01月07日

【追記】

※本文中敬称略


このページのてっぺんへ

■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16