「日本映画の感想文」のトップページへ

「サイトマップ」へ


源氏物語


■公開:1951年
■制作:大映
■監督:吉村公三郎
■助監:
■脚本:新藤兼人
■原作:紫式部(谷崎潤一郎・監修)
■撮影:
■美術:
■音楽:伊服部昭
■主演:長谷川一夫
■備考:


 1974年、宝塚歌劇団は池田理代子原作の「ベルサイユのばら」の演出を長谷川一夫に依頼した。初めて稽古場に姿を見せた長谷川をひと目見たオスカル役の榛名由梨は「本物の光源氏が来た!」と感動したそうである。長谷川一夫、当時66歳。

 このエピソードでもわかるように、長谷川一夫は人間ではない、い、いや、我々と同じ惑星の出身であるとは到底信じられない異形の人、ってことだ。それでも「素顔はものすごく汚い(山田五十鈴様、談)」だそうで、そんなこと今言えるのはベルさんだけだけど、それは化粧の後があまりにも綺麗すぎたってことなのね、女の目から見ても。

 谷崎潤一郎が監修した本作品は白黒映画でありながらおそらくは、日本映画の歴史上、もっともきらびやかで美しい映画の一つになっているのではないか?

 帝・小沢栄太郎の寵愛を独占していた桐壺・相馬千恵子を疎ましく思った弘徴殿・東山千栄子の意地悪は、息子の光源氏・長谷川一夫にも及んでいた。

 美しく成長した源氏は内裏の超アイドルで、出待ち入り待ちの追っかけファンは数知れず、中にはストーカーまがいの熱烈なファンもいる。ジャニーズ事務所のソレと違って、源氏の偉い(か?)ところはファンサービスにも熱心だというところだ。

 ちょっと過剰な気もするけど、それが長谷川一夫だとなんとなく許せちゃうのよねー、ウフッ!

 死んだ母親にそっくりな藤壺・木暮実千代は帝のナンバーワン愛妾。その藤壺に恋をしてしまった源氏。そこでまたまた登場の弘徴殿は、葵の上・水戸光子を源氏にあてがって二人の仲を引き裂き源氏の出世もパーにするつもり。あまり情の濃くなかった葵の上は、子を産んですぐ病死、源氏は年若い紫の上・乙羽信子を誘拐同然でゲットし気立てのよい娘に成長させる。

 いよいよ源氏の存在が疎ましくなった弘徴殿が右大臣・進藤英太郎に命じて、源氏を彼の後見人だった播磨入道・大河内傳次郎がいる須磨へ左遷した。その上、右大臣は源氏の命をも狙う。忠義な家臣の惟光・加東大介らの活躍で助かった源氏は播磨の娘、淡路の上・京マチ子を愛人に迎えたが彼女には良成・堀雄二という恋人がいた。

 生まれて初めて手前の女を取られた源氏はキレたが、優しい紫の上の説得に応じて淡路の上と良成を許した。権勢をふるった弘徴殿も死に、源氏は都へもどり、男の子を生んで出家した藤壺のもとへ駆けつけたときにはすでに彼女は死の床についていた。

 とりえあえず源氏物語の原作読むのが面倒だって言う人はこれ見ておけばいいと思う。文字だけでなく、絵巻でもなく、動くんだよねー、それもまさに絵に描いたようなっていう表現がこれ以上当てはまる映画もないと思うくらい。

 究極の美男子をとりまく出演者、女優さんたちもとてもゴージャス。だけど主役はその人たちが束になってもかなわないくらいの美貌。戦前の長谷川一夫はもっともっと綺麗だったっていうんだから、ね、この人は地球人じゃない!って言うのもわかるでしょ?

 さらに凄いのは本人が一番、それを自覚してるってこと。こういうのを無敵の二枚目って言うんだな。

 音楽は後のゴジラ映画の巨匠・伊福部昭。源氏と惟光が馬で出かけるシーンに「怪獣総進撃」のフレーズが出てくる。ちょっとビックリだけどこっちが先だから、ね。まさか後で怪獣映画に流用されるとは思わんよね。

 本作品は、カンヌ国際映画祭で撮影賞を受賞、スノッブな欧州人ってこーゆーの好きそうだ。

2001年01月07日

【追記】

※本文中敬称略


このページのてっぺんへ

■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16