黒の超特急 |
|
■公開:1964年 |
|
田舎の不動産屋、そんな役どころが思いっきりに合わない主人公、桔梗・田宮二郎は株で身代を潰し今ではしがない商売をしているが、その野心は脈々たるものがある。 そこへ自動車工場用地の買収話を持ち込んできたのがブローカーの中江・加東大介。彼は地元に顔が利く桔梗に地主を説得させてソコソコの代金で彼等から地所を巻き上げた。思わぬ大金を手にした地主たちはあっという間の散財、桔梗も株で勝負して、営業マン・中条静夫の説得にも耳を貸さず同様にあっという間にオケラになる。 実は中江は新幹線公団の専務理事、財津・船越英二に愛人の陽子・藤由紀子をあてがって骨抜きにさせ、第二次新幹線計画の情報を手に入れていた。中江は土地を公団に十倍近い値段で転売したのである。 この事実を知った地主は桔梗に抗議をしたが、もっと怒ったのは桔梗だった。上京した彼は陽子と組んで中江と財津を脅迫する。しかし財津には右翼の大物政治家がついており、桔梗は命を狙われる。 浮気の証拠を掴むために財津をおびき出そうとした陽子が中江に殺される。やくざ・千波丈太郎、橋本力に襲撃された桔梗は、殺された陽子と中江の会話を録音したテープを警察に届けた。中江は逮捕され、公団の汚職は明るみに出た。その頃、東京湾で陽子の死体が発見された。 自信過剰な人物がヘコむ姿というのは、爽快だねえ。そういうある種のどす黒い感情を刺激されて思わずはっとする。この映画の作り手が得意とする罠にどっぷりはまった感じの筆者だ。 この映画は陽子を演じた藤由紀子(後で田宮さんと結婚するんだよ)の退廃的な存在感と、加東大介の巧妙な芝居が見どころで、主人公はだいぶ助けられている。 特に明らかに殺されようとしている陽子と中江の会話は生々しくて背筋がぞっとする。こういうときに手加減しないで白目剥いた、女優さんとしては嫌だろうけど、死体まできっちり見せる作り手の趣味の悪さが秀逸。 録音機が一度発見されてしまうのも上手い演出だ。ここで本当に中江がセーフになったらどうしようもない、そうはならないだろうことは映画なんだからわかりきってるんだけど、ちゃんと伏線張ってハラハラさせてくれるのが嬉しい。 アクションシーンもあって、特にやくざの若い衆たちにボコられる桔梗の腹を思いっきり踏んづける橋本力、こりゃ痛いよねー。だって踏んでるのが大魔神の中身だもん、という余計なオチもあったりなんかして。 黒のシリーズの後半はスパイアクションふうになって娯楽性がどんどんアップされんだけど、前半の、本作品、それと「黒の試走車」「黒の報告書」「黒の札束」あたりはシリアスドラマ路線なので見ごたえがある。 (2001年01月04日) 【追記】 |
|
※本文中敬称略 |
|
file updated : 2003-05-16