「日本映画の感想文」のトップページへ

「サイトマップ」へ


薔薇いくたびか


■公開:1955年
■制作:大映
■監督:衣笠貞之助
■助監:
■脚本:衣笠貞之助
■原作:小山いと子
■撮影:
■美術:
■音楽:
■主演:根上淳
■備考:


 オールスタア出演のメロドラマ。

 芸大の音楽部の受験会場で一緒になった光子・南田洋子と弓子・若尾文子は合格するまで互いを受験番号で呼び、名前を名乗らないでおこうと約束する。光子の兄、真一郎・根上淳は一目で弓子のことが好きになったが、弓子は不合格になってしまい、姿を消したので、名前も住所もわからなくなる。

 真一郎の従姉妹、富子・矢島ひろ子は彼のことが大好きで、兄の舞踊家もそれとなく真一郎に打ち明けるが、真一郎は弓子のことが忘れられない。

 田舎の旧家に生まれた弓子は、左前になった実家を助けるために、有力者の息子・船越英二と無理矢理くっつけられるが、この地方には、正式な嫁入り前に相手の家で暮らす「あし入れ」という風習がある。

 新入社員には最初の3ヶ月間、「試の試用期間」というのがあって、この間なら正式な採用じゃないからクビにしてもオッケーよん!なのだが、アレみたいなもんだね。ただし、やる事をやってしまう、ってところがミソだ。

 思い余った真一郎が、新聞広告で弓子を探したもんだから、弓子の亭主はそれに気がついて大激怒、真一郎の家に怒りの電話をかけた挙句に、あれほど助平に言い寄っていた弓子にも愛想をつかして実家へ返してしまう。

 弓子もそのまますんなり真一郎のところへダッシュしてしまうかと思いきや、金策に走り回った父親・見明凡太郎は病死、家屋は売りに出されて、母親・三益愛子とともに東京の鶯谷でひっそりと暮らし始める。

 なんだかんだあってやっとめぐり合えた真一郎は弓子にプロポーズするが、「あし入れ」の事実を知って大ショック。「僕は純潔が好きなんだ」ってことは「僕はバージンじゃないとダメなんだ」ってことだから、テメー何様だと思ってんだこの馬鹿野郎!なんてことは当然思わない純情な弓子はひたすら泣くばかり。

 これはチャーンス!と思った富子はライバルの弱味を握ってほくそ笑む。可愛い顔して中身は狡猾な大年増のごとき富子であるが、こんなことでアッサリと恋が終わってしまうのでは、やっぱり弓子が可哀相、っていうか映画にならないのである。

 ここで彗星のように登場するのがリヴェラル派のピアノ教師、野々宮先生・京マチ子。真一郎のところへ行って「処女じゃなきゃ嫌だなんて贅沢言うんじゃありません!」とはまさか言わずに「そんなもん野良犬にでも噛まれたとでも思いなさい」と弓子を慰め、「正直なのはあなたを信頼している証拠」と真一郎を説得、見事二人はゴールインするのでありました、とさ。

 監督の衣笠貞之助は元は女形の女優である。な、ためなのか若尾文子がやたらと「よよと泣く」のでイライラする。若尾ちゃんたら、もう、じれったいわね、きい〜っ!

 普通、オールスタア映画というのは「忠臣蔵」とか時代劇(「ギャング忠臣蔵」ってのもアリ)か戦争映画だと思うんだが、本作品は、大甘、大時代なメロメロドラマで、2時間を越える長編、かつ、オールスタア映画。どお?わけわかんないっしょ?

 次から次へと何の脈絡もなくとんでもないスターがほとんど、どうでも良いような役どころでジャンジャン出てくるので、かったるいドラマなんかどこ吹く風という、素晴らしすぎる映画。

 まず高飛車なお嬢様である富子のお兄さん、国際的な舞踊家・長谷川一夫、その弟子の舞踊家・市川雷蔵。船越英二の弟・林成年、妹・村田知英子。南田洋子のご学友、川崎敬三(台詞なし、立ってるだけ)、品川隆二勝新太郎。根上淳の両親は小沢英太郎村瀬幸子、会社には高松英郎菅原謙二。それと若尾文子の幼馴染で一緒に東京へ出てくるのは、な、なんと山本富士子、、凄え。

2000年11月25日

【追記】

※本文中敬称略


このページのてっぺんへ

■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-06-06