風の武士 |
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■公開:1964年 |
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いつからこの国の日本映画は「ペーソス」や「説教」がないと名作と言われないようになったんだろうか?というか、ちゃんと娯楽時代劇を見まくった映画評論家がどれだけいるのだろうか? 武家の次男坊、名張信蔵・大川橋蔵が通う町道場には温和な道場主の退耕斉・宮口精二と屈強な師範代、高力・大木実がいて、退耕斉の娘、ちの・桜町弘子は信蔵のことが好き。 信蔵は、一膳飯屋の二階にしょっちゅうしけこんでいて、店を切り盛りしている律・久保菜穂子とイイ仲。毎日ぶらぶらしている信蔵が、紀州家の老中、水野和泉守・西村晃に呼び出され、安羅井という秘境の探索を命じられる。 信蔵は伊賀忍者の末裔なのだ。 安羅井の所在は絵巻物に記されている。退高斉が、高力に惨殺され、絵巻物を持っているちのが連れ去られた。信蔵は、ちのがその安羅井に住む一族の出身で、退高斉や高力も仲間であることを知る。 信蔵の監視役を兼ねる用心棒の忍者、猫・南原宏治と一緒に旅に出た信蔵は、猫の手下のお弓・中原早苗から、安羅井では大量の砂金が取れるので、紀州家が領地をかっぱらおうとしている事実を知る。 信蔵は紀州家出入りの豪商、紀州屋・進藤英太郎に買収されそうになるが、まんまと絵巻とちのを奪い返すことに成功。信蔵は紀州家を裏切ってちのを安羅井まで連れて行く。 高力が後を追ってきた。紀州家に寝返った高力を、信蔵が倒す。信蔵を殺そうとした猫は、お弓と相討ちになった。信蔵はちのと一緒になりたいと告白するが、ちのは一晩だけ信蔵に抱かれて、安羅井に戻って行った。 この安羅井という秘境にはオリジナルがあるらしいです。 「丹生都比売伝承」というもので、これは、大陸からお姫様とその一族が金属採取に優れた人たちと一緒に日本に渡って来て、熊野のあたりで水銀の鉱脈を見つけたという話です。 古代ロマンの香り漂う忍者活劇。大川橋蔵が演じる名張信蔵は、整いすぎたマスクに似合わない素行不良がこれまた魅力。キビキビしたアクションも清々しくて、こういう御伽噺にはドンピシャなキャラクターです。 橋蔵の「爽やか系」と対極をなすのが、神出鬼没の南原宏治と、明朗な敵役の大木実。いつもながらややオーバーな南原宏治の禍禍しさは本作品のような紙芝居的アクション映画を誠実に盛り上げます。片や、一本調子の重量感が魅力の大木実は柄に似合わず桜町弘子に横恋慕して墓穴を掘ります。一筋縄ではいかない、単なる悪玉に収まらない人間臭い悪漢二人も見どころの一つです。 主人公のオネーサン・野際陽子も、橋蔵を暖かく見守る心根のやさしい女性です。この作品が映画デビューだそうですが、どことなく垢抜けているところが時代劇映画には目新しい魅力。 いつもは物静かな宮口精二も、ここでは姫様のボディーガードでしかも忍者という役どころですからカッコイイ。覆面姿はスタンドインですが、大勢に囲まれて身をかわしながら手裏剣を投げるところはいかにも凄腕といういぶし銀の迫力です。 スピード感あふれる画面、予定調和でありながらハラハラさせる逃避行、そして忍者のチャンバラ!宝捜しは娯楽活劇映画の基本。 (2000年11月18日) 【追記】 |
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※本文中敬称略 |
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file updated : 2003-06-06