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無常


■公開:1971年
■制作:ATG、実相寺プロ
■監督:実相寺昭雄
■助監:
■脚本:石堂淑朗
■原作:
■撮影:
■美術:
■音楽:
■主演:田村亮
■備考:


 大阪で商売をしている旧家の長男、正夫・田村亮は、大学へ行かず、家の商売を継ぐ気配もなく、仏像に惹かれている。当然だが、両親にしてみれば困った息子。正夫の姉、百合・司美智子には縁談話が持ち込まれていた。幼馴染の寺の住職、萩野・岡村春彦、家に住み込みの書生、岩下・花ノ本寿は百合に惚れている。

 両親が揃って外出した日、正夫は百合を抱きすくめた。百合と正夫はその日から関係をもつようになる。やがて百合が妊娠した。二人の密会現場を目撃した萩野は驚愕し、寺の観音菩薩を愛撫した。正夫は、子供の親を使用人の岩下にすべく、姉に因果を含め両親の帰宅時間を狙って岩下と姉が関係している現場に出くわすように仕掛けた。

 岩下と百合は結婚し、子供も無事に生まれた。正夫は、京都の仏師・岡田英次に弟子入りした。仏師の後妻は不能になった夫にあきたらず正夫にモーションをかけてくる。正夫は毎晩、後妻と関係し、その現場を覗いている仏師にわざと見せつけた。

 仏師は精力的に仕事を続けた。仏師の息子・佐々木功は三人の奇妙な共同生活を目撃して愕然とする。

 実家へ一時帰宅した正夫は、ふたたび百合と関係をもった。二人の関係を知った岩下は新幹線に飛び込み自殺をした。

 仏師の息子から正夫の異常な行動を知った萩野は、岩下の自殺の原因となった正夫を問い詰めるが、正夫は、自分の世界には極楽も地獄も罪も罰も存在しないと豪語する。萩野は己の嫉妬心を見透かされて狼狽する。

 仏師が腹上死した。仏師の息子は、正夫を殺そうと形見のノミで切りかかったが自爆。正夫は死んだ祖母・菅井きんの声に誘われて行った。百合は成長した子供と楽しく生きていた。

 この映画は実相寺昭雄監督ですが、怪獣は出てきません、念のため。

  実相寺監督がオペラの「魔笛」を演出した時に、トンでもない飛道具(バルタン星人、ピグモン、カネゴン、シーボーズほか)を出したらしいですね。筆者としては嬉しいですけども、オペラ業界の評価はどうだったんでしょうか?ついでですけど、筆者の大好きなウルトラシリーズIN実相寺は「ウルトラセブン」の「第四惑星の悪夢」です。マニアックでどーもスイマセン。

 それはさておき、長い映画です。筆者は2時間を超える映画は苦手です。

 主人公が自分は一切無なんだ!と悟ったよーなコトをぬかすわけですが、じゃーなんでブチキレタ師匠の息子の刃を必死でかわしたのか?ってトコロが微妙にイヤーな感じです。素直に刺されて死ぬかと思ったんですけども、なあんだ他人は無になってもいいけど自分はそういうのヤなんじゃない?というか、ったく戦後生まれの甘ちゃんは口先だけだなあ、というわけで、この映画の田村亮はとてもヤな人です。

 「家は男兄弟で、母も着物しか着ませんでしたから、映画に出て初めて女性の背中に手を回したとき、ブラジャーって言うんですか?あれに触ったときにはビクーっとなりました」という静電気体質の、じゃなくて、純情青年だった田村亮さんなんですがねえ。

 ゲバ棒世代に漂う虚無的なシンパシーを強烈にアッピールした作品、とでも言うんでしょうかね。ちょっと、そのダル−い映画でして、こういう時代の空気を疑似体験するにはいいかもしれませんけども正直言ってスゲー眠いです。

 あと、城跡で戯れる学生さんたちの一人が小林昭二なんですけど、筆者はてっきり引率の先生かと思いましたら、学生さんもタメ口だし、ってことは現役大学生なんでしょうか?たぶん20年くらい浪人してたんでしょうかね?

 やっぱり実相寺監督、なにをやってもSF。 

2000年10月22日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-06-06