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日本の夜と霧


■公開:1960年
■制作:松竹
■監督:大島渚
■助監:
■脚本:大島渚、石堂淑朗
■原作:
■撮影:
■美術:
■音楽:
■主演:津川雅彦
■備考:


 安保闘争の最中に結ばれた新聞記者の野沢・渡辺文雄とゲバ学生だった玲子・桑野通子の結婚式。

 そこへ現役のゲバ学生の太田・津川雅彦が現れ、かつて野沢や中山・吉沢京夫にスパイとして処断された学生のことや、今は中山の妻となっている美佐子・小山明子らの過去が次々に暴かれていく。

 反主流派として中山や野沢に反発していた東浦・戸浦六宏と坂巻・佐藤慶は内部分裂によって活動が崩壊した経緯を話す。そこには密告、スパイなどつねに仲間割れがあり、今、太田もまた誰かの密告によって警察に手配されたのではないかと思われる。

 、、、てな調子で延々と、ひたすらディベートしまくる学生、否、学生役の俳優さんたちは気の遠くなるような長まわしで、早口言葉でももうちっと楽だろうと思われる台詞を必死に喋るんです。

 弁論部の発表会、っつーか模擬裁判とかこんな感じ?

 多少、噛もうがロレツが怪しくなろうが、台詞が飛ばない限りは全部オッケー。観ているほうとしてはハラハラしどおし、疲れるったらありゃあしない。

 こういうの現実に体験したか、その頃、イイトシこいた大人で社会的な背景をちゃんとふまえていた人じゃないと、とてもじゃないけど途中で寝るんじゃないでしょうか、そういうのが好きな人や現役でゲパってる人にとっては燃えるのかもしれませんが。筆者としてはまるで出身惑星からして違うとしか思えない世界です。

 ところが「破防法」ンところだけはちょっと目がさめるんですね。某大手新興宗教が起こした卑劣な事件をきっかけに議論されたアレです。最初は「やっちゃえ!」など思っていた筆者ですが、この映画を観てから反対する人の気持ちがよく分かるようになりました。

 どんな法律も、誰かしかの都合の良いように使われる危険をはらんでいるのであるから、そン時の気分次第で決めたりしちゃイカン!ということで、火炎瓶投げろとは決して言いませんけども、そういうことに関して今の50代の人たちが必死で考えて行動したことがかつてあるんだぞ!という歴史のお勉強ですね。

 はあ、こういう風に論旨を組み立てて考えていたワケなのねーというのは、この映画を見るとかなり分かりやすいので、世相の記録として鑑賞するには良い教材ではないかと思われます。

 筆者は映画に娯楽を求めているので、全然面白くもなんともありませんでした、というかこういう映画もあったのねーという、これまた映画史の勉強のつもりで、、、。

 面白かったところは?といえば戸浦六宏の役名が「とうら」だったことくらいしか、ないんですけどもねー。あと、佐藤慶を筆頭とするそのほかの左翼系な俳優さんたちに囲まれて一人だけ浮きまくってる津川雅彦が一人だけ演説じゃなくて台詞だった、ってことくらいね。

2000年11月12日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-06-06