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卓球温泉


■公開:1998年
■制作:大映、日本テレビ
■監督:山川元
■助監:
■脚本:山川元
■原作:
■撮影:
■美術:
■音楽:
■主演:松坂慶子
■備考:竜宮温泉→たっきゅうおんせん。


 平々凡々な日々を送る主婦の松坂慶子が、ラジオ番組の中でパーソナリティーの牧瀬里穂の一言をきっかけにして、かつて亭主の蟹江敬三と一緒に訪れたことのあるひなびた温泉街に家出する。

 そこは町おこしイベントに頭を悩ませる旅館の亭主、桜井センリベンガル上田耕一久保明らがいた。

 温泉宿にはつきものだった卓球を見直そうという松坂慶子の言葉にいたく共鳴した若手の経営者たちは、廃校になった小学校で卓球大会を開催する。

 筆者はこの映画、久保明だけを目的に観てしまいました。従いまして、ご都合主義ココに極まれり的なストーリーや、鼻白んじゃうくらいの善意の塊、といったところは、全然気になりませんでしたわ。

 話はコレだけでたわいもないし、深みもない。その代わり、あくなきわかりやすさとほのぼのとした余韻が残る。それは松坂慶子が中年体形になったから、、、というのではなくて、素直で真面目だからだろう。オバサンなのに美人だというところも大切だ。不細工ががんばると押し付けがましいが、美人だと喜ばしいものだ。

 なんせこの主婦のご高説は、たまたま混浴しちゃったビジネスマンの大杉蓮や、先代経営者の受け売りである。それを恥と思わず、奢らずのまことに真っ正直に語るので、いっそ清々しい。見習いたいもんだね、いや、まったく。

 若い小娘に主婦業を馬鹿にされた松坂慶子が敢然と言い返すところも良い。客の共感を得て余りあるものがある。

 距離は短縮されたけれども、時間の障壁はますます厚くなっている。そんな大人のノスタルジーを刺激する映画だが、筆者が脊椎反射で感動してしまったのは、松坂慶子が学校の運動具倉庫で偶然に発見するサクラの水彩セット。

 あー、あれ持ってたんだよなー。ちょっとリッチな家庭はギターペイントだったよねー。

 松坂慶子の堂に入った卓球ぶりは感心するぞ。カット割り無しでラリーするんだが、これがなかなか凄い。真剣そのものだ。本当は久保さんにもっと活躍してほしかったのだが、ま、贅沢は言うまい。

 久保明はさすが往年の映画俳優だけのことは大アリ。ちょっと表情を作ると周囲から浮いて見えるくらいの男っぷりの良さだ。これには劇団出身の個性派俳優もかなわない。かつて映画スタアが選りすぐられた人たちだったことをシッカと確認。映画俳優なんて生まれで9割がた決まるのサ!

 若い頃の回想シーンに一瞬、ショートヘアの松坂慶子が登場する。遠景なのでわかりにくいが、サーヴィスカットのつもりらしい。これを見て「なんたって18歳」における意地悪バスガイドを速攻で思い出したら、あなたも立派なイイトシこいたテレビッ子、である。

 松坂慶子の息子は窪塚洋介。オカマに言い寄られたりして散々だが、甘いムードのなかに存在感がある。後で出てくる人はどっかでひっかかるね。

 卓球ブームに便乗、なのだが意外とそういうあざとさは感じられないし今観ても浮ついたところが感じられず素直にほのぼのできる。温泉には卓球、普遍のテーマを扱う映画は錆びにくいのということだろう。

2000年12月18日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-06-04