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大学の若旦那


■公開:1933年
■制作:松竹
■監督:清水宏
■助監:
■脚本:荒田正男
■原作:源尊彦
■撮影:
■美術:
■音楽:
■主演:藤井貢
■備考:元祖・若大将。


 醤油屋の若旦那、藤井・藤井貢は、大学ラグビーの花形選手で女の子にもモテモテ。案の定、商売一徹の父親は理解を示さず、店は番頭の忠一・徳大寺伸に譲ろうと思っている。忠一は若旦那の末の妹の許婚だが忠一は芸者の星千代・逢初夢子のことが好きで、星千代は若旦那に夢中だ。

 芸者を校内に連れ込んだのがバレた若旦那は退部させられるハメに。喜んだのは父親で、これで商売にも身を入れてくれると思いきや、上の妹の婿が遊び人なのに便乗し、毎晩、お茶屋やレビューショーに通うようになる。

 若旦那は、練習中に怪我した後輩の三井秀男(弘次)の姉・水久保澄子と知り合う。彼女がレビューの踊り子だったことを槍玉に挙げたライバルの山口勇は、若旦那が部へ復帰するのは許されないと言い放つ。

 大学最終戦になんとか若旦那を出場させたい三井は、姉に若旦那と別れてくれるように訴える。姉は身を引くことを決意し、忠一に別れの手紙を託した。試合は若旦那の大活躍で勝利したが、試合後、手紙を読んだ若旦那はシャワーを浴びながら泣いていた。

 若大将シリーズのルーツと言われているので、そのつもりで観ていたが、なるほど主人公のキャラクター、元全日本選手の藤井貢(なんと役名もそのまんま)は若大将っぽい、ってこっちがオリジナルだが。遊びに行く金を帳場から失敬するのに、カブトムシで札を吊り上げる。そのカブトムシを机の引出しに一杯飼っていて、元気な奴を選りすぐっていたりするのが笑える。

 雇い人ゆえに、若旦那と星千代との仲を見て見ぬふりをしていた番頭の忠一(超美青年の徳大寺伸!)を誤解して殴りつけた若旦那だったが、星千代に自分をあきらめさせるためにわざとレビュー通いをするという繊細なところもある。

 芸者の星千代が練習を見たいとせがむと、末の妹の制服を仮装行列に使うからと借り受ける。大学の教授には制服姿の彼女を妹だと紹介したが、そこへ本物の妹が現れて構内を逃げ回るドタバタのタイミングの良さが素晴らしい。

 なるほどこれは元祖・若大将だ。

 ラグビー部の面々も、ロッカーに隠れていた星千代を見てぶったまげる日守新一が最高に可笑しい。いかにも女にモテねーが、いかつい体躯で態度のでかい山口勇が、実は喧嘩にめちゃくちゃ弱いという設定もいい感じだ。これは青大将か?

 東京・駿河台にあるニコライ堂など、東京の美しい風景も見どころの一つ。最初はマットペインティングかと思ってしまったくらい。

 のびのびとした戦前の大学生が恋とスポーツに燃焼する、爽やかな風俗映画。若旦那の復帰を制裁付で認めようという動議を発するラグビー部員その1が笠智衆、長身痩躯な貴公子然としたハンサムボーイである、見てみよう。サイレント音響版、つまり音(部分的に)がついてるサイレント映画。

2000年12月18日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-06-04