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黒の凶器


■公開:1964年
■制作:大映
■監督:井上昭
■助監:
■脚本:舟橋和郎
■原作:梶山季之
■撮影:
■美術:
■音楽:
■主演:田宮二郎
■備考:

ネタばれしてます!


 大手家電メーカーの大日本電機で検査部のアルバイトをしている片柳・田宮二郎は、夜学に通いながら本採用の技師を目指す。片柳の家は母・小夜福子、一人子一人の母子家庭。

 ある日、知り合ったバーの女、れい子・浜田ゆう子が大日本電機の株で一儲けしないかと誘ってきた。れい子にメロメロになった片柳は、親切心から新規開発製品の部品を焼却炉の中から拾い出してれい子に渡した。その部品はライバルメーカーの太陽電機に渡ってしまう。れい子は産業スパイだった。

 さて、ここまでの田宮二郎は実に「らしく」ない。なんせブルーカラーだ。作業服着た田宮さんというのも珍しいからそれはそれでファンとしては嬉しいのだが、なんであんな女にコロっと騙されるかなあ。

 で、主人公は「僕は悪いことなんかしてません」とか言うが今ならそういうのはインサイダー取引って事になるんだが当時はそういうの無かったのねー。

 れい子の正体を知った片柳は解雇されてしまう。おかげで母親はショックで病死。普通ならここでヘコんで終わりだが、ポジティブシンキングな片柳は「俺も産業スパイになってやる!」と誓い、雌伏3年、どこでどういう修練を積んだのか知らないが、彼は優秀な産業スパイになってしまう。

 あーやっぱり転んでもタダで起きないね、この人は。

 大日本電気の機密書類を強奪した太陽電機側の産業スパイを脅して奪回した片柳は、大日本電気社長と、かつて自分をクビにした直属上司の戸村・根上淳から大金を巻き上げた。

 返す刀で片柳は、トルコ譲のマリ子・十和田翠を太陽電機専務の黒沼・金子信夫の家に住み込み女中として潜入させる。マリ子と黒沼の長男・矢島陽太郎がデキちゃった事を知った片柳は、二人をかけおちさせておいて、誘拐事件をでっち上げる。

 特許情報をテレビ中継させて、その内容を傍受する取引をもちかけた片柳は、黒沼の追っ手をまんまとだまして、未申請の特許を公知の事実にするために新聞発表してしまう。

 片柳にマジ惚れして途中まで協力していたれい子だったが、親心を利用した卑劣なやり方に絶望して去って行った。

 自信過剰すぎる相変わらずの田宮二郎が、高い鼻をぴしゃりと折られてしまう、が、やっぱり前向きなこの人は「俺はもっともっと凄い産業スパイになってやる!」と捨て台詞を残す、なんと申しましょうか、懲りない人だね、まったく。

 こういうスパイものでは、アナログ時代とデジタル時代という二つの大きな時代の隔絶というのがあるので、今観るとノスタルジーなのだが、当時の最先端というのを検証するのもまた一興。

2000年11月25日

【追記】

※本文中敬称略


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file updated : 2003-06-02