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薔薇合戦


■公開:1950年
■制作:松竹
■監督:成瀬巳喜男
■助監:
■脚本:西亀元貞
■原作:丹羽文雄
■撮影:
■美術:
■音楽:
■主演:三宅邦子
■備考:


 古い日本映画の、それも現代物を見るとき、そこに登場するキャリアウーマンというのはバリバリと仕事ができても、色気と気品を失わない。見習いたいものである。

 大手の化粧品会社「百合化粧品」を兄妹で乗っ取ろうとしていた三姉妹の長女・三宅邦子は、兄の死後、兄が犯した背任横領の証拠を元同僚・安部徹に握られてしまいやむなく百合化粧品を去る。

 三宅邦子は資本家・進藤英太郎をパトロンにして化粧品の新会社を設立する。三宅の次の妹・若山セツ子は大人しい性格だったので安部徹につけこまれそうになるが、姉の会社の経理担当・永田光男とめでたく結婚する。

 宣伝部長としてヘッドハンティングされた鶴田浩二はバツイチでプレイボーイという評判だったが実は身持ちの固い純情タイプ。若山セツ子は鶴田浩二のことが本当は好きなのだが姉の命令で結婚してしまったのでしかたなくあきらめている。

 三姉妹の末娘・桂木洋子は鶴田浩二とは顔なじみで映画雑誌の記者をしている。桂木洋子には風采の上がらない雑誌記者・大坂志郎という恋人がいる。

 女性社長として持ち前の商才を発揮した三宅邦子の会社の新製品はどれも好評であっという間に百合化粧品と肩を並べるようになる。三宅は若い恋人・仁科周芳(後の岩井半四郎)を強引に入社させてしまうが、この一件で出世がフイになった永田光男は、愛人・若杉曜子を作り家に寄り付かなくなる。

 実は女房・千石規子がいた大坂志郎は、金欲しさから愛人との醜聞をネタに三宅邦子を脅迫するが、大坂と面識のあった鶴田浩二に追っ払われてしまう。

 若山セツ子を励まそうと鶴田と三人で映画に行ったにもかかわらず、「鶴田と若山セツ子がデートした」と言う桂木洋子の悪戯を真に受けた永田光男が酔ったイキオイで自分の女房を風呂場で蒸し焼きにしようとする事件が起き、妊娠中だった若山はショックで流産してしまう。

 スキャンダルに見舞われパトロンから見捨てられた三宅邦子、亭主が愛人と一緒に北海道で同棲中の若山セツ子、妻子持ちに体を許してしまいムカついたので姉が密かに惚れている鶴田浩二を横取りしようとして鶴田にひっぱたかれた桂木洋子。

 まさにどん底の三姉妹だが、三宅は再びビジネスに闘志を燃やし、若山は駄目亭主を見限って鶴田浩二とラブラブになり、桂木は三宅と一緒に立派なキャリアウーマンとして、それぞれに再出発を誓うのであった。

 なんていうんですかね、成瀬巳喜男監督だっていうからチマチマした話かと思ったらあにはからんや(おとうとしらんや、古いギャグ)出てくる奴が片っ端からスネに傷ありの人ばっかというなかなかハードなドラマでビックリ。

 安部徹が冒頭、若山セツ子をイキナリ待ち合いに連れ込んだときにはすわっ女性のピーンチ!だと思ってアセったなあ。いくら波乱万丈のドラマでもそういうことは一応ね、無かったけどさ。

 女性が起業家になったり、バリバリのキャリアウーマン志向だったり、別居結婚なるアイデアが登場したり、女性のほうから逃げた男のところへ離婚談判に赴いたり、と驚くほどリベラルな内容なのにビックリ。

 この映画の鶴田浩二は本当に美形。本人としてはいわゆる二枚目俳優というのには飽き足らなかったんだろうけど、広告代理店に鼻毛を抜かれたクソ馬鹿しかいない企業の宣伝部長という役どころにありながら、二枚目で優しくて礼儀正しくてかつ色気も腕力もアリというのはちょっと美味しすぎるのでは?と思うくらいの絵に描いたようなイイ男。

 こんな三姉妹ならハイヒールで踏まれてもオッケー?華やかな三宅邦子、清楚な若山セツ子、フラッパーな桂木洋子、さてあなたの好みはどのタイプ?

2000年08月17日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-06-01