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白蛇小町


■公開:1958年
■制作:大映
■監督:弘津三男
■助監:
■脚本:土屋欣三
■原作:
■撮影:
■美術:
■音楽:
■主演:梅若正二
■備考:蛇女優。


 婚礼の夜、花嫁を嫁ぎ先まで送るはずの籠がどういうわけか道に迷い、ある寺の横まで来ると、雨の中で白無垢を来た女が立っている。よく見るとその女の顔は半分焼けただれていた。

 花嫁が来るのを待っていた屋敷では当主の左門・志摩靖彦が後妻・朝雲照代と一緒にやっと到着した籠を出迎えた。ところが花嫁の姿は忽然と消えており、中から蛇が出てきて一同大パニック。新郎となるはずだった新之助・和泉千太郎はガックリ。

 今から三十年前、女中と恋仲になった左門は親の命令で無理矢理に遠方へ飛ばされた。その間、女中は下男と不義密通したという濡れ衣を着せられ実家に戻されてしまう。左門がイイトコのお嬢さんと婚約したと言う噂を聞いた女中は発狂し、花嫁衣裳を着て実家に放火、大火傷を負った末に死んだ。そして左門の嫁は女中の霊に憑りつかれて末代までのたたりを宣言した後、首をくくって死んでしまったのだ。

 そーゆー大事なことは早く言えよ!と怒ったりしない温厚なあ新之助は、早速、花嫁の捜索を開始。ちょうどその頃、左門の次男で新之助の弟、源次郎・梅若正二は後妻とウマが合わなくて家を飛び出し勘当されていた。

 源次郎は花嫁が消えた寺を訪ね、和尚・荒木忍の協力を得て境内を捜索、大木の下の穴で花嫁の死体を発見する。傍には蛇がわんさかたむろっていた。

 江戸で人気の見世物小屋に出ている蛇使いの芸人、お紺・毛利郁子は、浪人の大助・千葉敏郎にぞっこん惚れている。大助は後妻のおすがの実弟で、どうやらお紺と組んで悪だくみをしているようだ。一座のアイドルは綱渡りのお菊・中村玉緒で、鼻っ柱が強くておまけに蛇が大好きというどう考えても友達が少なそうななお紺もお菊だけは可愛がっていた。

 源次郎が事件の真相を嗅ぎ付けそうになったので、大助はならず者の親分・羅門光三郎にお紺を抱かせてその代償として源次郎を襲撃させる。お紺をハゲでデブでブサイクな親分と強引にくっつけてしまい自分は若いお菊とラブラブになろうというのが大助の目論み。

 新之助が女中の幽霊に遭遇し、首吊り死体で発見された。ショックを受けた左門が病気で寝込んでしまう。そこへ用人・水野浩が源次郎の死体が発見されたと報告したのでいよいよ左門は心細くなり、おすがの弟である大助に家督を譲ると言い出した。

 万事上手くいったと大喜びのおすが。因縁話を利用しまんまと家を乗っ取ったおすがの前に、死んだはずの源次郎が登場。真相を暴露し、幽霊役をやらされていたお紺の協力を得て悪人たちをやっつけるが、お紺は大助に斬り殺されてしまう。源次郎は家に戻り、お菊と夫婦になったので左門の家はやっと平和になった。

 タイトルだけ見たら、いったいどんな蛇が出てくるんだろうとワクワクしてしまうのだが、出てきたのはせいぜいアオダイショウとヤマガカシくらいなもので、ボアとかアナコンダとかは全然出てこない。

 この映画は怪談映画ではなくスリラー映画であるから、あくまでも蛇は小道具として登場する。なーんだそれだけ?とガッカリしてはイカン。ぜんぶ本物であることに価値がある(んだろう、多分)。

 そしてその本物を、わし掴んだり、はだけた胸の上を這い登らせたりしても全然平気な毛利郁子は私生活でも蛇好きだったらしい、芸は身を助けるってコトね。

 蛇女のお紺は悪女というよりは「都合のいい女」。四谷怪談の若杉嘉津子や化け猫の入江たか子のような冷たさを感じる美人系でない、平凡な美人顔の毛利郁子には適役、で、その普通の美女が湯上りで蛇と戯れちゃうのは風変わりなリアリティがあってアタック力が強い。

 実質上のヒロインはお菊。彼女にも実は因縁があって、狂い死にした女中の実兄夫婦が関西へ流れた後、産まれた娘だったと言うオチがついている。

 蛇好きな女、つい最近でもナスターシア・キンスキーが大蛇とツーショットしている写真が話題になったけどこれこそキワモノ中のキワモノ。毛利郁子の「蛇シリーズ」はこうして始まったのである。

2000年09月23日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-06-01