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大奥絵巻


■公開:1968年
■制作:東映
■監督:山下耕作
■助監:
■脚本:成澤昌茂
■原作:
■撮影:
■美術:
■音楽:
■主演:佐久間良子
■備考:女番長・大奥編


 商家の三人姉妹、長女は大奥で若年寄、浅岡・淡島千景、将軍、家斉・田村高廣の寵愛を受ける部屋子のお阿紀・佐久間良子は次女。

 浅岡は、何かにつけて高ビーな、京都の公家から輿入れした正室の萩乃・桜町弘子、松島局・三益愛子、藤尾局・木暮実千代らと激しく対立していた。

 町人の暮しに憧れる上様を祭りの夜にお忍びで外出させた浅岡は、お阿紀とともに大奥で異例の出世を遂げる。面白くない萩乃は事の真相を糾そうと、部屋子の飛鳥井・宮園純子を証人にして浅岡を追いつめる作戦。

 姉二人の止めるのも聞かず「あたしも綺麗なお着物が着てみたいのー!(馬鹿)」という頭カラッポな末妹、お町・大原麗子が松島局の力で大奥へ。上様とお阿紀が無断で城外へ出かけた証人に利用されそうになったお町は、証言拒否。

 おかげで飛鳥井は、浅岡らに役者・中村紅雀との不義密通をでっち上げられて拷問された末に発狂して首を吊った。役者を殺して死体を井戸へ捨てた浅岡は、頭の悪いお町が余計なことを喋るんじゃないかと怖れ、ついにお町を殺そうとする。

 すんでのところでお阿紀が現れ、浅岡を背後から小刀で刺した。浅岡はお阿紀に罪が及ばないように瀕死の姿で自らの心臓を一突きして井戸へ身を投げた。浅岡が役者を殺した事を萩乃一派にチクったのは浅岡の部屋子たちだった。

 お町は自分が浅岡を殺したと名乗り出た。お阿紀は年寄、勝山・阿井美千子に頼んでお町を城外へ逃がした。後ろ盾のなくなったお阿紀のところへ萩乃から毒の入った洋酒が届けられた。お阿紀は毒入りと知りながら酒を飲み、上様の寝所へたどり着いて息絶えた。

 風采が立派な淡島千景や佐久間良子(ただし大原麗子は除く)がプロレタリアートで、どう見ても庶民派の桜町弘子や三益愛子(ただし木暮実千代は除く)が貴族様というのがなんともはや皮肉なキャスティングではないか。

 意地悪おねーさんの拷問アイテムはキセル。宮園純子の手の指にはさませてギンギンに締め付ける淡島千景。淡島千景のおでこに扇子攻撃する三益愛子、見た目がお上品なだけに一層陰湿です。

 地位と権力に翻弄されるのは男社会だけの話ではありません。女の場合はそこに色恋沙汰が絡むから余計に始末が悪い。それもこれも男(上様)がアホタレだからじゃないの?とは思いつつも、その上様とて立場に束縛されているわけで、滅多なことは出来ないんでうね。つくづく羨ましいですね英国の王室。なんでもアリで、と言うかアソコまで慎みがないというのもいかがなものか?ではありますが。

 野の花のように素直に生きたいと願ったお阿紀は死んでしまいますが、ラスト、お阿紀の亡骸を抱いた上様が祭りの雑踏を歩く。行き交う人が誰も振り向かないのでそれが幻と判る。やがて大奥の廊下に画面は変り、そこでもお阿紀の死体を見てびくともしない萩乃や松島の姿が。

  ずらりと並んだ大奥の女たちの非人間的なまでの権力志向の中で、上様とお阿紀だけが永遠の暗闇に消えて行きます。まばゆい絢爛たる画面との対比が強烈な印象を残すシーンです。

 人間の愚かさ、脆さ、美しさが心に染みます。監督はやくざ映画の名手、男の世界だけでなく女の世界を画いても上手い人。

 ただ一つ、どーしても大原麗子だけは腹立たしい存在ですね、同性の目から見ると、あれは純粋可憐なんていうモンじゃなくて、自分が可愛いと思っているただの馬鹿娘。女はあんなに馬鹿じゃない、もっと利口で計算づくの腹黒い生き物。異性にロマンを求めてしまう、そこが見抜けないというか遠慮している。そこが歯がゆい。

2000年10月08日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-06-01