大奥(秘)物語 |
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■公開:1967年 |
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で、どこが十八歳未満禁止なんでしょうか? エピソード1「藤純子編」 将軍、家宣・高橋昌也の時代。将軍専用のハーレム・大奥。そこでナンバーワンを争うのは中老、おこん・宮園純子と、おすめ・久保菜穂子。 おこんのもとへ送られた大名の娘、おふさ・萩玲子とおふさの女中、おみの・藤純子。ところが家宣はおみのに目をつけて夜伽の相手にご指名、まあ将軍様ったらお目が高いこと!なんてことはなく、半分嫌々ながら合体したおみのは、地味で控えめな性格はどこへやら、将軍の子種を宿すためならなんでもやっちゃう野望お局に大変身。 肺病をわずらったおこんが、懐妊したおすめを池に突き落とすという暴力事件が発生。そのあおりを食ったおみよは将軍の相手を自粛するように命ぜられてしまう。子供を産めなかった大奥の女は一生、飼い殺しの憂き目に遭う。 「あんたみたいな人生は嫌よ!」と年寄、松島・山田五十鈴に言い放ったおみのはどこの馬の骨とも知らない男と寝て無事、懐妊。産まれた子供はやがて次期将軍となりおみよは大奥で絶大な権力をもつのだった。 エピソード2「岸田今日子編」 将軍以外の男子禁制の大奥では若いギャルが身体をもてあまし気味。中老、浦尾・岸田今日子の部屋子、篠の井・小川知子は、将軍と夜伽の相手を監視する添い寝役をおおせつかったのだが、退屈した将軍に現場を見せ付けられて欲求不満で頭の中がパンパンになってしまう。 若い娘よりもっと欲求が充満していた浦尾は篠の井を誘惑してレズビアンに調教する。将軍の相手役に昇格した篠の井が懐妊した兆候を見逃さなかった浦尾は篠の井に堕胎を強要するが、母性にめざめた篠の井はこれを拒否する。 嫉妬に狂った浦尾が篠の井に水銀を飲ませた。流産した篠の井は絶望して井戸に身を投げた。 エピソード3「佐久間良子編」 3年の奉公をもうすぐ終える予定の部屋子、おちせ・佐久間良子は恋人の長吉・村井国夫と結婚するのが夢。 ところがもうちょっとのところで家宣にご指名されてしまう。これで一生大奥から出られないと覚悟したおちせは、中老、飛鳥井・岩崎加根子のはからいで待ち合い茶屋で長吉と面会する。かけおちしようとした長吉とおちせだったが、警護の侍・西田良、結城哲也に阻まれ、長吉は斬り殺された。 やけくそになったおちせは、寝所で小刀を引き抜き将軍に斬りかかった。腰を抜かした家宣はなんとか逃げおおせたが、制止しようとした松島はおちせに刺殺された。大奥は騒ぎの最中に倒れた行燈の火で大火事を出した。 この映画は成人映画の指定。別に藤純子の胸がはだけるわけじゃないし、ベルさんが脱ぐ(そりゃすごい)わけでもないのになんでコレが十八歳未満禁止なのかは謎だ。 どーだろねこの豪華な女優さん。芸術座か帝国劇場クラスだ。ちょっとビックリするのは藤純子の野心満々なお局様。「やったもん勝ち!」というストレートさがスゴいじゃないか。 岸田今日子は相変わらずだが、佐久間良子のアグレッシヴな姿も見物だ。トロそうでしょ?彼女、それが刀振り回して火がバンバン出てるセットでのたうち回るのよ。 女が子供を産む道具として見られていた時代はほんの近来まであって、それは未だに根強い。男女の役割の違いであるから、致し方ないという見方もあるわけだが、権力が介入すれば悲劇以外の何モノでもないということ。 大奥を利用する者、大奥に押しつぶされた者、最後は大奥に反抗した者、それぞれは直接には関係ないが作品の表情を多彩にしながら、客の心理リズムに呼応している。全エピソードに傍観者として登場した将軍とは違い、事実に対峙し滅ばされる松島こそが大奥そのものであった。 ともすれば男性側から見て都合の良い女性ばかり登場しそうな東映映画にあって、本作品は異色な存在と言えるのではないか。 大奥モノにはナレーションが定番、本作品は渡辺美佐子。 (2000年10月08日) 【追記】 |
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※本文中敬称略 |
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file updated : 2003-06-01