「日本映画の感想文」のトップページへ

「サイトマップ」へ


女王蜂の怒り


■公開:1958年
■制作:新東宝
■監督:石井輝男
■助監:
■脚本:内田弘三
■原作:
■撮影:
■美術:
■音楽:
■主演:宇津井健
■備考:踊る!菅原文太。


 神戸で荷役業を請け負う海堂組の女組長、ゆり・久保菜穂子は女王蜂と呼ばれる鉄火肌。最近、海堂組の船が頻繁に海賊に襲撃されるようになり、ゆりは昔の子分の彦太郎・佐々木孝丸とともに金策に奔走する。

 港祭りに因縁をつけてきた新興勢力の龍神組。幹部の剛田・天知茂は海堂組の縄張りを狙っている。ふらりと現れた若い男が龍神組の用心棒として雇われた、男の名前はハリケーンの政・宇津井健。政は剛田に批判的な組長の娘、アケミ・星輝美の協力を得て、海賊の正体は賠償金目当ての貿易商と組んだ龍神組であることを突き止める。

 剛田は襲名披露のチラシを海堂組に送らなかった。関東一円の親分が集まった宴席で海堂組を無視してあざ笑う魂胆だったが、料亭の仲居、京子・三原葉子の知らせをうけたゆりが乗り込み、逆に剛田の不手際を糾弾した。

 赤っ恥をかかされた剛田は部下の譲次・菅原文太を引き連れて、賭場に現れイカサマな手口でゆりの金を巻き上げようとしたが、政のおかげで事なきを得た。ゆりをカタギにしたい政と彦九郎は縄張りを五百万円で剛田に買い取らせた。しかしゆりは、譲次が酒にまぜた睡眠薬で気を失ったところを剛田に犯される。

 ついに海堂組と龍神組の全面対決の日が来る。海堂組の広・中山昭二らが埠頭に集結すると龍神組はイキナリ発砲、ドスが乱舞する大乱闘がスタート。そこへ警察官の格好をした政が登場、乱闘を鎮めるが剛田が逃走、後を追ったゆりと譲次が撃ち合いになる。そこへ政がかけつけ三人を逮捕した。

 祭りの陽気な画面からイキナリやくざの乱闘シーンへなだれ込む、ハイテンションな導入。そこへ颯爽と登場する宇津井健の垢抜けないアクションが抜群にイイ!って何が?かと言うと、その真摯さとひたむきさ、である。多少、その殺陣の段取りが驚くほどトロいんだが一生懸命だから許してあげよう。

 様式美の神様、天知茂は下世話な悪党だが、コールマン髭にスリーピース、ポマードでぴっちぴちのヘアスタイルにメッシュが入った、国籍不明の怪しいキャラ。そんでデビュー直後のコチコチな菅原文太とカップルという奇跡のキャスティング。

 いつもながら自信満々の、それほどでもない美人役の久保菜穂子であるが、陰湿な悪党(やらせたらたぶん日本一)の天知茂に襲われて、一面のピンク色のライトには大爆笑、さめざめと泣く。で、それを慰める宇津井健「狂犬にかまれたと思ってあきらめなさい」って、犬に噛まれるのと強姦されるのと全然違うと思うんじゃないか?宇津井。

 ある種の人たちには見どころ一杯の本作品。キャバレーのシーンでは、菅原文太のダンスも見れてファンは随喜の涙を流すことであろう。ここで菅原文太の運動センスが実に素晴らしいことがここで証明される、驚くほど上手いのよダンスが、ホント。

 海上保安官の制服を着て颯爽と登場した宇津井健の剛直な姿は人間の皮を被ったスーパージャイアンツ。こういうストレートな芝居って見ているほうが恥ずかしくなっちゃうのがツライが、とにかく豪快に笑っておくのが勝ちだ。

 怖いもん知らずのヒロイン、星輝美の存在はイキオイがあるのだが、いかんせん顔が限りなく、たばこ屋の看板娘レヴェルなのが難。久保菜穂子が大人しいのでバランスは取れてたのかもしれないんだけど、こういうワガママ娘にはキュートな顔が必須だと思うのでここのキャスティングは筆者的にペケ。

2000年10月01日

【追記】

※本文中敬称略


このページのてっぺんへ

■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-06-01