化け猫御用だ |
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■公開:1958年 |
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おそらく、劇中に大映の大スタアがノンクレジットで出演していなければその存在すら忘れ去られていたに違いない。 江戸の町、何故か白猫専門の猫さらいが出没し、町方の中田ラケット師匠とそのパシリ、中田ダイマル師匠はてんてこ舞いだ。 今日も今日とて(「スカイキッド・ブラック魔王<吹き替え版>」参照)茶屋の娘・楠トシ枝の愛猫が腰元風の女にさらわれてしまう。 猫はさる大名屋敷でお毒見役をさせられていた。何匹も必要だということは、ただいま若君暗殺の計画が進行中ということで、バカスカ当たりが出てしまうからなのだった。猫、大迷惑。 当主の土屋羽前・南条新太郎は任地で海賊一味を退治し大手柄を立てた後、病気になったので緊急帰国の途中であった。羽前の書簡を持参した十太夫・伊沢一郎は犯人を突き止めることを奥方・橘公子に誓う。 羽前には放蕩気味の弟、仙之助・梅若正二がいる。忠義な腰元、浪路・近藤美恵子は仙之助が薬屋めぐりをしていたり、たまたま仙之助がお土産に持ってきた団子を食べた女中が毒死するのを見て、真犯人は仙之助では?と疑う。 心優しい若君は自分の代わりに猫が死ぬのをとても悲しむのだが、そうは言っても猫より人間の命が大切なのでお母さんとしては心配でたまらない。そんな折、黒装束の男が屋敷に忍び込み、若君をキッドナップしてしまう。 心労とショックで奥方は発狂、寝所にこもって誰も入れさせず、化け猫のような風体になった挙句に「食事の量を二倍にしろ」とわめき散らす。仕方なくご飯を運ぶ腰元たち。 ある日、年長の侍女が含み針で毒殺された。十太夫と仲良しの萩乃・大和七海路が中田ダイマル・ラケットに捜査を依頼したので、ダイ・ラケ師匠は屋敷に泊り込むことになる。 仙之助を信じたい浪路は寝所の裏から隣の稲荷明神へ通じる秘密の通路の存在を知る。仙之助はダイ・ラケ師匠にある作戦を耳打ちした。 羽前が帰国すると、十太夫がイキナリ手下とともに襲いかかってきた。本物の家来を惨殺してなりすました十太夫は、羽前に処刑された海賊の息子だった。屋敷の中で若君を探す海賊一味の目の前に突如、化け猫が2匹現れる。すわ、発狂した奥方がついにモノホンのモンスターに変身したか!と驚く彼等に仙之助が斬りこむ。 化け猫はダイ・ラケ師匠のカブリモノだった。奥方は発狂したと見せかけて、仙之助が誘拐して稲荷の境内に匿った若君の分の食事を運んでいたのだった。偽者の十太夫も、仲間の萩乃も死んだ。若君暗殺の陰謀は潰えたのだった。 世間で言うほど、馬鹿馬鹿しい映画でもないですよコレ。もちろん市場的な価値は、本編にはなんら関係のないあるシーンを除いてゼロでしょうが、化け猫キャラの使い方はアイデア賞モノっす。 カブリモノというのが凄いじゃないの、しかもスゲー不細工なので笑おうにもニコリともできん。 さらに笑えないのはダイ・ラケ師匠の目くるめくアチャラカ攻撃。悪党には化け猫よりも師匠のアチャラカを1時間くらいぶっ通しで聞かせたほうが良いお仕置きと見た(ダイ・ラケ師匠、ごめんなさい、私はあなた方の芸にはとんと付いて行けませんです、ハイ)。 主演の梅若正二。実生活でも素行不良だった(噂)彼はこの後、キワモノ天国の新東宝へ移籍、しばらくして映画界から姿を消すのであるが、年長者にもタメ口という天狗な性格の仙之助はまさに適役。途中まで「きっとコイツが犯人だ」と思わせるに十分な客受けの悪いヤサ男である(梅若ファンの人、申し訳ない、謝ってばっかだな)。 ノンクレジットで大物ゲストが出演。音吐朗々としたその声、あ、あなたは○○雷○(伏字になってないですが)!というのは雷○ファンには有名すぎる名シーン。 映画スタアも大変そうだが、こういうサーヴィスは客にとっては眼福眼福。 (2000年08月17日) 【追記】 |
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※本文中敬称略 |
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file updated : 2003-05-31