温泉ポン引女中

■公開：1969年
■制作：東映
■監督：荒井美三雄
■助監：
■脚本：松本功、鳥居元宏
■原作：
■撮影：
■美術：
■音楽：
■主演：橘ますみ
■備考：石井輝男の愛弟子、華麗なるデビュー？

　師匠の値打ちはその弟子を見ればわかる。小池朝雄がノークレジットで顔出し、南原宏治の濃厚で過剰で猥雑な熱演がうっとうしい（褒め言葉）お色気映画、しかも師匠譲りのスプラッター風味。

　白浜温泉の老舗宿屋、望海楼では女中にポン引をやらせて、ドスケベ観光客を引っ張り込み、ブルーフィルムにて接待後、売春をさせていた。

　ポン引女中のリーダーは、女将に拾われた姉妹の姉、イク代・葵三津子。平穏無事な温泉街に突如、関東の暴力団、昇竜会が乗り込んできた。昇竜会の若頭、三郎・林真一郎は組長の阿久津・高橋昌也が出所してくる前に一財産と目論んでいた。

　昇竜会はホンバンストリップのキャバレー「ナポリ」を開店、望海楼の客は激減する。三郎の情婦、ミミ・橘ますみはイク代の実の妹で赤ちゃんまでいた。ある日、イク代の恋人でダンプの運ちゃん、秀男・岡田真澄が望海楼の女中引き抜きとは知らずに手を貸してしまい、怒ったイク代と大喧嘩、当然、ミミとイク代は絶縁状態に。

　出所した阿久津は、議員の相沢・安部徹への献金のために乱交パーティーを開催。前衛舞踏の一座も呼んで座が最高潮に達したとき、警官隊がなだれ込んでくる。阿久津は片腕の市川・山本昌平に命じて身代わりに子分の松浦・蓑和田良太を差し出す。警察に漏れたのはミミがイク代に喋ったからだと疑った阿久津はミミを拷問する。

　秀男のダンプが事故を起こす。当然、仕組んだのは阿久津。修理代を工面するためにイク代は風俗ライターの山之辺・南原宏治に抱かれる。その事実を知った秀男は激怒し、他の女中と一緒に去って行った。

　三郎がミミを逃がそうとして射殺された。怒った阿久津は望海楼の海中浴場にモーターボートを突っ込ませる。入浴中だったポン引女中の月子・三笠れい子は重症、新子・片山由美子はスクリューに巻き込まれて死んだ。

　ミミはイク代と組んで阿久津を強請ろうとするが、赤ん坊を人質に取られてしまう。スポーツカーでひき殺されそうになった赤ん坊をかばったイク代は跳ね飛ばされて即死。必死に逃げるミミを追い掛け回していた阿久津の車は倒れた看板にスリップして崖から転落、炎上した。

　赤ん坊と二人っきりになったミミは、ねんねこ背負ったまま、波止場で温泉客・小池朝雄をポン引き、母子ともども立派な娼婦になることを誓うのだった。

　向上心とかそういうものとは一切無縁。ヴァイタリティーと意地で張り合う女たちの戦いと友情！まるでスポーツ根性ドラマだ！と叫びたくなるくらいです。

　石井監督のエールでしょうか？南原宏治、土方巽とそのお弟子という常連組の大活躍。そして最後に顔を出す小池朝雄はノンクレジットです。他にも温泉客として胡桃沢耕史（清水正二郎）がいたりして、作るほうも楽しんでいるのがわかります。

　中でも南原宏治はノリノリです。風俗ライター、なんていかがわしい響きでしょう。先生と呼ばれつつ執筆の代償として身体を求めてくるという下世話感あふれる役どころを、堂々とかつ過剰に見せます。特に女中とのセックスを生中継されるところの南原宏治はもはやショッカーの幹部もびっくりな凶悪顔、かなりキテますね、見るほうとしては嬉しい限りです。

　しかしなんですな、どうしてこんなトコにいるんでしょうか？な高橋昌也。新劇のソフトな中年という印象ですけどもね。色敵と呼ぶには色気不足、薄味な魅力が売りだと思ってたんですけども。こんなド汚いドやくざという役どころは究極のミスマッチかも。ま、一応「吸血鬼ゴケミドロ」という物凄いキャリアもあるのでそのあたりが買われたんでしょうか？

　昇竜会の幹部、林真一郎が主催したブルーフィルムの鑑賞会で上映されたのは師匠・石井輝男監督の「徳川女刑罰史」の中の一編で色欲尼と僧侶が青空の下でセックスするシーン、ちなみのその時の僧侶役は林真一郎、ＳＦですかね？

　橘ますみの現代娘がキュートで可愛い。ちなみにポン引女中さんたちは客引きをセパレートの水着で行います。今時で言えばレースクイーンでしょうかね？ちょっと小さ目のサイズがエロいのでお見逃しなきように。

（2000年10月14日）

【追記】

※本文中敬称略

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