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あさき夢みし


■公開:1974年
■制作:中世プロ、ATG
■監督:実相寺昭雄
■助監:
■脚本:大岡信
■原作:
■撮影:
■美術:
■音楽:
■主演:ジャネット八田
■備考:


 大人の「とじこもり」 は実相寺監督の「無常」でちょっとアブナイ青年役だった花ノ本寿が、本業の「やんごとなき系(本職は日舞)」に戻っている。

 若くして弟に皇位を譲らされ、富小路に住まいする皇子は御所様・花ノ本寿と呼ばれていた。御所には愛人の四条・ジャネット八田がいたが、彼女は霧の暁の皇子・寺田農の子供を妊娠していた。生まれた子供はいずこかへ預けられてしまう。

 御所は詩歌の才能はあったが政治嫌いで、それを理由に隠居させられたのですっかり「とじこもり」生活が板についてしまっていた。たまたま四条に紹介した腹違いの弟で仏門に帰依している阿闍梨・岸田森が四条と相思相愛になってしまっても全然気にしないヤル気のなさ。

 一応、坊さんなので遠慮していたが四条のナイスバディで禿げアタマ(抜けたのではない剃っているのである、念のため)が爆発してしまった阿闍梨は四条に夜這いをかける。

 御所はそれを許したが、四条はたちまち宮廷内のスキャンダル女王に。御所の病気も祈祷で治した阿闍梨が今度は自分が熱病に罹って死んでしまうと、男に翻弄される生活が嫌になった四条は侍女・原知佐子とともに密かに家出する。四条は得意だった絵の才能を発揮し、行く先々で作品を作り喜ばれることに幸福を感じていた。

 身分を隠していても持ち前の美貌は隠せない。あっちこっちでモテモテの四条と一緒に歩くうち、そういう気(ケ)がついた侍女は行きずりの男とデキてしまう。

 そんな侍女の気持ちを察した天使のような四条は一人で旅を続け、久しぶりに京都へ戻ってみると無骨な武士たちが御所の屋敷を取り囲んでいた。四条はそこで御所の死を知らされた。

 四条はその足でかつて自分の愛人でその後、出家し今ではただのボケたジジイとなった入道に自分の生んだ子供のようすを聞き、無事だと知るとまた何処とも無く姿を消してしまった。

 公家の社会から武家の時代へのちょうど端境期。美しい花ノ本寿や寺田農とはヤレても、無骨で体臭のありそうな侍大将・毒蝮三太夫には頑として体を譲らなかった四条、天晴れ!(意味不明)とか、そういう話ではない、念のため。

 人間にとって美意識というのは決して「贅沢品」なのではなく、実は空気や水のような「必需品」である。イイトシこいたヲタクっぽい御所と、その取り巻きどもであるが、美をとことん追求している人は世俗にまみれないわけだから浮世離れするのは当然なのだ。

 貴族社会全体が「とじこもり」なわけだが、そこで一つ、己の才能を見出して外の世界へ脱出したのが四条というところか。ジャネット八田のどすこい体形には、女と娘と母親が同居している。その風情がこの映画のすべてと言っても過言でないかも。

 やっぱアレかしらね、所詮、野郎どもの見る「夢」ってこんなん(女のハダカ、というかオッパイ)かしら?という感じで、面白かったのは宮中の女たちが四条の噂でもちきりになるところ。なあんだコレって「ワイドショー」見て盛り上がるオバサンそのものだった。

 「あさき夢みし」とは美しい夢ははかなく浅い夢である、というところか。その中で死んでしまう御所と解脱した(?)四条。互いに雅の世界を彷徨う二人。

 てなわけで、この映画、途中で睡魔をこらえるのがかなり難しい。だって「夢のような」映画なんだからしかたないのさ。

2000年08月17日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-31