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幽霊塔


■公開:1948年
■制作:大映
■監督:佐伯幸三
■助監:
■脚本:笠原良三、岡田豊
■原作:
■撮影:
■美術:
■音楽:
■主演:船越英二
■寸評:


 数年前、養父の殺人犯人として逮捕された深窓の令嬢が、取調べ中に急死するという事件が起こる。

 遺産として残されたのはド田舎の瀟洒な洋館だったが、殺人事件の現場でもあり地元の人間は恐れて誰も近づかなかった。その洋館を譲り受け、ホテルに改造するために死んだ令嬢の従姉妹にあたる青年、達夫・船越英二がやって来る。

 船越が二階へ上がってみるとそこには見知らぬ女性、園枝・羽鳥敏子がいて、洋館の時計塔に重大な秘密があるらしいことをほのめかした。羽鳥は死んだ令嬢の友人だという。

 ホテル開業の準備に入った船越は出資者の叔父・見明凡太郎とともに計画を進めるが、ホテル勤務の経験があるという謎の親子、母・平井岐代子と羽鳥敏子がどさくさまぎれに住み込みで働くことに。

 妙に洋館の構造に詳しい羽鳥敏子の挙動は普通ならかなりヘンだと思うのだが羽鳥がえらい美人だったので船越的にはそんなことはどうでも良かった。

 羽鳥は東京からやって来た弁護士の柏木・小柴幹冶の顔を見て血相を変えた。建築技師の落合・植村謙二郎は羽鳥の母親と以前から知りあいだったようだ。ちょうどそのころ船越の許婚、順子・美奈川麗子がやって来て押しかけ女房顔負けに羽鳥を追い出そうとしたので、船越はさらに羽鳥に気持ちが傾いてしまう。

 小柴幹冶は羽鳥に結婚を迫ったが断られたので腹いせに羽鳥の正体を知りたければ東京にいる高名な整形外科医の瀬沼博士・徳川無声を訪ねてみろと船越に言う。直後、船越は何者かに仮死状態になる毒を塗った吹き矢で襲われた。

 東京で博士に会った船越は、殺人犯として逮捕された令嬢に仮死状態になる毒を盛って、死んだと見せかけて拘置所から自分の病院へ運び整形手術を施したと告白される。

 数年前の事件、令嬢が部屋へ駆け込んだときは養父は何者かに襲われて絶命寸前だった。殺人の濡れ衣を晴らすために令嬢は小柴に頼んで自分の顔を変えて真犯人を探すために洋館へ舞い戻ったのだった。羽鳥の正体は死んだはずの令嬢だった。

 羽鳥の母だと名乗っていたのは真犯人の仲間だった。船越を吹き矢で襲ったのもその女だったが彼女は殺されてしまう。ついに警察が動き出した。

 深夜、養父が隠していた宝石箱を狙って何者かが時計塔に現れた。養父殺しの真犯人は植村謙二郎だった。追い詰められた植村は時計塔の外へ出たが逃げ切れず、時計の針に飛びついて「ルパン三世・カリオストロの城」状態になるかと思われたが無事、手を滑らせて地面に落下、たいして高い塔でもなかったので彼は警察に逮捕され、羽鳥の無実は証明されたのだった。

 いやあ踏んだり蹴ったりだねえ羽鳥の元彼、小柴幹冶。それと、羽鳥も大したタマだよね、公務執行妨害やらなんやら結構過激な罪を犯して拘置所脱出してるし、小柴の愛情を体よく利用した、と言えなくも無い。ズバリ、あんた悲劇のヒロインなんかじゃなくて悪女以外の何者でもないッス。

 そんな悪女やら気の強い婚約者に翻弄される二枚目の船越英二ってかなりお得な役回りだ。甘い二枚目に分別は無用、まさに本編の主人公としては最高のトロさだ、というか単なる馬鹿といわれても仕方ないんだがまあいい。

 「整形美女」と言えば「土曜ワイド」の定番だ。まさに本作品こそそのルーツといえるのでは?

 時代を感じるファッションだが出てくる女優さんはみんな美人で華がある。昔の映画では選び抜かれた人だけが女優と呼ばれておったンだよねえ。

 江戸川乱歩のオドロなイメージをかもし出すためにマット合成と洋館のジオラマがなかなかよく出来てて、というか古すぎて生臭さが浄化されてんだろうけど、ドラマのダルダルさをカバーしてあまりある出来栄え。

2000年07月29日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16