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暴力金脈


■公開:1975年
■制作:東映
■監督:中嶋貞夫
■助監:
■脚本:野上龍雄、笠原和夫
■原作:
■撮影:
■美術:
■音楽:
■主演:池玲子(筆者推奨)
■寸評:


 九州出身で元証券マン、現在、大阪でホステス・絵沢萠子のヒモ兼フリーランスの総会屋をしている宏・松方弘樹は今日も某企業から賛助金をせしめるために番号札を求めて順番待ち。定食屋で知り合った古参の総会屋、乃木万太郎・小沢栄太郎に弟子入りした宏はプロの総会屋として修行を積む。

 三味線の材料を製造販売する親方・汐路章のところでアルバイトに猫さらいをしていた宏がたまたま暴力団の寺岡組組長の情婦の飼い猫を叩き殺してしまいあやうく殺されかけるが、集団就職で一緒に大阪へ来て一度は就職したが今では寺岡組の若衆になっている奥田・梅宮辰夫に助けられる。

 乃木は意地汚い手で出世した若手総会屋の神野・田中邦衛を倒すべく、宏と奥田とその手下を従えて総会に乗り込むが神野の部下に襲撃され失明してしまう。乃木から証券を譲り受け総会屋の心構えを伝授された宏は、持ち前のバイタリティーを発揮してのし上がっていく。

 東京に進出した宏は大物総会屋でバックに暴力団の綿志会がいる西島・丹波哲郎が幹事総会屋として居座っている企業にちょっかいを出してフクロ叩きにされそうになり思わず寺岡組のバッヂを使ってしまい奥田から詫び金を徴収される。宏の度胸を買った奥田は寺岡組が関東に進出するための足がかりとして宏を利用する。

 若手総会屋として頭角をあらわした宏は、総合商社の副社長・大滝秀治と東亜製作所の重役・嵯峨善兵から、東亜製作所社長の曽宮・若山富三郎の背任横領をネタに株主総会のぶち壊しを依頼される。しかし東亜には西島がついていた。これに眼をつけた奥田が綿志会を脅す。暴力団の介入を望まない宏は奥田と仲たがいするが、見せしめとして部下・室田日出男が寺岡組の鉄砲玉・川谷拓三に射殺される。

 宏は曽宮社長の弱みを握るために彼の情婦であるバーのママ、アヤ・池玲子に接近。早世した愛娘の代わりとしてアヤにセーラー服を着せコスプレを楽しんだ後、セックスすると言う曽宮社長の性癖をとことん嫌っていたアヤは復讐のために宏に不正融資の証拠を教えるが曽宮と西島に先手を打たれてしまう。

 意地になった宏はさらにアヤから情報を得ようとするが、ある晩、アヤに呼び出された宏は、曽宮社長がアヤの父親と親友でありながら親友の妻を犯しその結果生まれたのがアヤだと聞かされる。母親の日記を宏に渡したアヤは猛スピードで車を走らせトンネルの側壁に激突し死んだ。

 宏は意地を捨て曽宮に日記を叩きつける。東亜製作所株主総会当日、会場に姿を見せた宏は企業と総会屋の癒着を喝破し西島につまみ出される。総会は粛々と進行したのだった。

 総会屋と企業が本当に持ちつ持たれつであるという裏社会をここまで分かりやすく、かつ、本音に近いところで描いた作品は初めて見ました。特に「企業経営者のワンマンを取り締まるため」という目的でメインバンクや筆頭株主が総会屋を飼育しているというシーンには呆れて物が言えません。やくざも企業も総会屋も一蓮托生だったということなんですね。

 そんなド汚い大人の男たちの中で決して身奇麗とは呼べないのですが翻弄される池玲子の薄幸芝居はとても印象的です。実父に犯されるときのあの目、悔しいのか哀しいのかそれが入り混じった多重構造的な目の力が素晴らしいと思いました。

 特別出演の若山富三郎は「ヒットラーのような社長」と評されますが、それを言うなら「若山富三郎のような社長」のほうがとてもヤだな、というギャグだったのでしょうか?イキナリ画面に若山富三郎の顔がバーンと出てきたとき、その風体はどう割り引いても堅気には全然見えないわけです。なんせ他に登場する企業人が大滝秀治、加賀邦男(は、ともかく)や浜田寅彦というナルホド的キャストだったのでそのギャップに仰天しちゃうわけですね。

 出てきただけ、しかも何もしてないのに観客が笑える、さすがは若山先生です。

 劇中、丹波哲郎先生による歌唱シーンあり、特にコメントすべきことはありませんが、なるほど「キイハンター」の主題歌でデュエットができなかった理由がまるわかりでした。

2000年06月10日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16