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戦後秘話 宝石略奪


■公開:1970年
■制作:東映
■監督:中嶋貞夫
■助監:
■脚本:中嶋貞夫
■原作:菅原通済
■撮影:
■美術:
■音楽:
■主演:菅原文太
■寸評:


 「キイハンター」のエピソードの中に、国際的なスパイの戸浦六宏が自分の替え玉として高宮敬二を爆弾自動車に乗せて爆死させる、というものがあった。戸浦六宏と高宮敬二の身長、その差は約25センチ、なぜ気がつかないのか、子供心に不思議だった。

 終戦と同時に、旧軍部は戦時中に民間人から巻き上げた、ではなく、紙切れ一枚で献納させた貴金属をあっという間に身内で分けてしまった。

 その最中、伝説の巨大なダイヤモンド・グレートモンゴリアがどさくさにまぎれて持ち出され、戦前からの右翼の大物・片岡千恵蔵のもとへ届けられた。それは時価50億円と言われており、やがて進駐軍も血眼になってその所在を探し始めた。

 復員して来た山田・菅原文太は、ヤミ屋の親分・小松方正と知り合った。小松方正と愛人との間に生まれた娘・橘ますみが、パンパンになって挙句に梅毒で死んだ自分の妹にそっくりだったため、菅原文太は彼女のことが好きなのだが手を出さずにいた。

 グレートモンゴリアを換金するために、千恵蔵は菅原文太をマカオの裏社会の大物・若山富三郎のもとへ派遣した。しかし、政治家・小池朝雄、小松方正、秘密警察の黒木・戸浦六宏らがダイヤモンドを狙っていた。

 あまりにも高額なため、ダイヤモンドは換金できなかった。再びマカオへダイヤモンドを引き取りに行った文太は何者かに襲撃される。

 文太がマカオに行っている間に、千恵蔵が死去、その秘書・高城淳一は小松方正にそそのかされて戸浦を暗殺しようとして返り討ち、その戸浦も小松が細工した自動車で事故死、さらに小池朝雄が小松方正の商売をチクって逮捕させてしまう。

 その頃文太は、旧日本陸軍に暴行されて売春婦に身を落とした女・賀川雪絵に世話になっていた。そこへイキナリ、本物の黒木と名乗る男・丹波哲郎が屈強な手下・中田博久八名信夫を従えて登場、ダイヤモンドを麻薬に代えようという話をもちかけてきた。

 千恵蔵の盟友で三悪(性病、麻薬、売春)追放運動をしていた菅原通済・菅原通済(本物)と出会った文太はダイヤモンドを売った金の使い道をたくすべく、襲撃された傷口にダイヤモンドを押し込んでひそかに帰国。文太が死んだと思い込まされていた橘ますみが小池朝雄の女になっているのを確認した文太は、小池をノックアウトして菅原のもとへ向かった。

 だがマカオで麻薬中毒にさせられていた文太に強烈な幻覚が現れてしまい、あたり一面の炎に包まれた車は海に消えてしまう。

 ダイヤモンドに目が眩むのは金色夜叉のお蔦さんだけじゃないんです。ガマクジラのような人間がうじゃうじゃ出てくる本作品で、金の亡者に成り下がった大勢の人たちの中でも、もっとも秀逸というかザマーミロ度が高いのは、知能犯の小池朝雄。あと一歩で独り占めってところで文太の正義の鉄拳を喰らい倒れた拍子に頭を打って発狂、まじめな秘書・室田日出男を狼狽させるのです。

 三悪追放運動って三十代後半のイイトシこいた大人なら、で、家にテレビがあった人なら、子供の頃にコマーシャル見たはずです。そのとき、「性病は末代までたたるぞよ!」という趣旨の発言をしていた得体の知れないジジイが本作品では、片岡千恵蔵のモデルになった、だけでなく本物も出てきちゃう菅原通済。

 この映画は「三悪追放」がテーマですから、そのへんは死に物狂いでダイヤを守った文太が最期に叫ぶ「この金で日本中のパン女(スケ)を助けてくれよおお」に顕著です。また、いつもはイイ気になってるスケ番というキャラクターが多い賀川雪絵が、うら寂しいけどもけなげな売春婦という役どころで凄くいい味出してます。

 いつもながらヌーボーと登場する丹波哲郎。ファッションも役名も「キイハンター」からスライド登板ですが、まんまゲシュタポ風味の戸浦六宏を替え玉にするというのはいくらなんでも無理がありすぎでは?あ、秘密警察だからそんなんもアリ?そいで「してやられる丹波」ってのは珍しいので得した気分になれるかも。

 菅原文太がいいな、と思うのはナルシストじゃないところでしょうか。いや、別に鶴田浩二と比べてるワケじゃないんですが(なら名前出すなよ)。かと言って高倉健のようにイイ人すぎないところ。あのシャープな輪郭線はほんとにゾクゾクっとするほど色気があるのに、それを見せびらかさないってところ。本作品ではゲリラロケの連続で、おびえたマカオ市民に通報されるんじゃないのか?と心配になっちゃうほどの熱演でした。

2000年04月30日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16