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秘録 長崎おんな牢


■公開:1970年
■制作:大映
■監督:太田昭和
■助監:
■脚本:高岩肇
■原作:
■撮影:
■美術:
■音楽:
■主演:川崎あかね
■寸評:


 東映京都で抗議活動までおきた石井輝雄監督の異常性愛シリーズは、女優を人間扱いしないことで有名。本作品の路線もソレに近いものがある。

 異人との混血児で幼い頃から赤茶けた頭髪を主な理由にイジメられてきたおみつ・川崎あかねは、行方知れずになった母の代わりに育ててくれた祖母が死ぬと、商人・早川雄三のもとへ引き取られた。

 ある晩、店が火事になり主人の刺殺死体が発見され、遺留品からおみつが犯人として捕らえられる。陰険な役人・近藤宏は点数稼ぎのために容疑を否認するおみつを拷問して無理やり自白調書に拇印を押させてしまう。

 おみつの処刑日が近づいてきたある日、密輸の片棒を担いだ受刑者のお仙・奈良あけみから真犯人の名を教えられたお密は、仲間の強力を得て脱獄する。

 女囚モノって東映の専売特許じゃなかったんですね。大映の技術力が描くポルノ時代劇ってどんなもんか興味あったんですけど、さすがでしたねえ。ろうそくを口にくわえて上半身裸の女囚がえっちらおっちら歩くところなんか本場のイタリア映画見てるよう。東映だとどっかしら安っぽいんですけど、大映美術スタッフの底力を見せつけた!って感じです。

 しかしながら西洋人とのハーフに、狐顔で和風美人の川崎あかね、というのはナンボなんでも無理じゃないでしょうか。どうせなら同房の原良子とか真山知子のほうがはるかに「それっぽい」顔立ちだったと思われます。

 牢屋で出産する売春婦・横山リエはちょっと頭が足りないけど気のイイ奴というキャラクターで生まれた赤ん坊を見て「牢屋で生んで良かったあ!」と叫びます。女郎屋ならとっくに堕胎させられてるからなんですね。ふだんは乱暴な他の女囚も母性本能にめざめて赤ん坊をとても大切にします。それに青い目の子供なんか生んだらとんでもなく差別されるか始末されるか、、、皮肉なシーンです。

 脱獄した二人(お仙とおみつ)はおみつの主人を殺した真犯人・上野山功一を追い詰めますが、そもそもは仲間だったお仙の暗殺を企てた上野山に復讐するのが脱獄の本当の目的だったので、顔を合わすやいなやお仙と上野山は大乱闘になります。力尽きたお仙を救おうとした川崎あかねは、な、なんと大切な生き証人である上野山功一をぶっ殺してしまいます。

 えーっ!と驚く観客が目にしたのは磔にされる川崎あかねでした。小さい頃から酷い差別に遭い、混血を理由に恋人との仲も当然のように引き裂かれたおみつは娑婆で生きることを諦めてしまったのでしょう。無実の罪で処刑されることよりもなによりも、人一人を絶望に追い込む差別の構図、これこそが最大の悲劇ということですね。

2000年05月21日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16