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舶来仁義 カポネの舎弟


■公開:1970年
■制作:東映
■監督:原田隆司
■助監:
■脚本:原田隆司
■原作:
■撮影:
■美術:
■音楽:
■主演:若山富三郎
■寸評:


 シカゴの伝説的なギャング、アル・カポネの下で修行した3兄弟。乱暴だが義理人情に厚い長男・若山富三郎、冷静で計算高い兄弟の金庫番である次男・渡辺文雄、頭の回転と女に手を出すのがやたらと早い三男・山城新伍

 久しぶりに故郷でバケーションをしようと思ったこの馬鹿兄弟は、故郷のおじいちゃんから、世話になったやくざの二代目・大木実のピンチを助けるように指示され、早速、大木に出会ったとたんに襲撃される。

 襲撃してきたのはイタリアマフィアと手を組もうという広域暴力団。カポネたちは彼らの連携を叩き潰し、追ってきたFBIの女捜査官・グラシエラの命も助けて、無事、米国の刑務所へ護送されたのであった。

 三兄弟はアメリカ暮らしが長かったせいでしょうか、日本語が帰国子女のようにたどたどしい、のは平素であって、特に長男は興奮するとイキナリ広島弁になってしまいます。次男だけはとっさの英会話も巧みですが、三男はほぼゼンジー北京と藤村有弘をミックスしたような相当にいいかげんなキャラクターです。

 三兄弟は仁侠映画が大好き。連れ立って見に行く映画は「釜ヶ崎極道」(若山富三郎がテキヤの親方に扮して大暴れする映画)。長男は主演の俳優をみるなり大はしゃぎで「ワカヤマ イズ ビッグスター?」と、よしゃあいいのに三男に確認します。「ノー、ノー、三文役者」と命知らずな回答をする三男ですが、長男は映画に夢中で全然気にしないのでした。

 かようにハチャメチャな展開ですが、まじめな次男は常に冷静に事態を収拾し、広域暴力団の親玉・安部徹、この人が出てきただけでワクワクしてしまいますが、とそのあまり優秀でない身内・南廣らを暗殺します。愚兄賢弟というところでしょうか。

 そしてこの大馬鹿トリオはFBIの上司・ジェリー伊藤、ネルソンじゃないですよ、から依頼されて安部一味に捕らえられた美人捜査官を助けるのですが、ギャングが警察を助けるなんてトンでもない!「そんな映画はハリウッドでも作らないよ!」と嘆く三男めがけて、ある意味一途で純情な長男は、こう叫ぶのです。

 「馬鹿たれ!あたりまえだ!(そんな映画を作るのは)東映だけだ!」

 そして最終決戦に挑む三兄弟が並んで歩いていきます。そこでまたまたはしゃぎすぎの長男が「ミーはコージ・ツルタね」とかますと、いつもは取り合わないまじめな次男もノリノリで「じゃあ、ミーはケン・タカクラね」、そしてとどめの三男が「ミーはトミサブロー・ワカヤマ?ノー、ノー、それちょっと格が下がる!」つくづく怖いもんしらずな奴ですね。

 ボルサリーノを斜に被って、上等なフラノかなんかのスリーピースに身を固め、葉巻を吸って(ただし長男は酒場で牛乳飲んでます)、見た目は立派なシカゴギャングですが、中身はまんまいつもの若山富三郎なのでした。

 個性も性格もまるで違う三兄弟に唯一共通しているのは体形。アメリカンな食生活が余計にそうさせたのかも?つまりデブってことですが。

 こんなトンでもない爆笑映画は思ったとおりヒットし、続編「カポネの舎弟・やまと魂」を生むのです。そう、こんなパラダイスのような馬鹿映画作るのは「東映だけだ!」で、調子乗ってシリーズにしちゃうのも、「東映だけだ!」なんですね、これが。

2000年04月30日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16