「日本映画の感想文」のトップページへ

「サイトマップ」へ


続 組織暴力


■公開:1967年
■制作:東映
■監督:佐藤純彌
■助監:
■脚本:石松愛弘
■原作:
■撮影:
■美術:
■音楽:
■主演:丹波哲郎
■寸評:


 銀座で低価格の製氷卸業を営む渡辺文雄は、大学の体育会系の学生・待田京介谷隼人潮健児らを大量に雇い暴力団からの嫌がらせにも動じない。

 古参のやくざ・見明凡太郎と本格的な対立抗争目前に組長が乗った乗用車を爆破させ、銀座を牛耳った渡辺文雄は、広域暴力団の幹部・内田良平と対決することになる。

 ところが渡辺は内田が所属する組織のボス・河津清三郎に取り入り傘下団体におさまってしまう。さらに渡辺は河津の後援者である代議士・水島道太郎との関係も深めていく。

 知能犯の渡辺の行動に注目した警視庁の警部・丹波哲郎は部下・室田日出男山本麟一に命じ渡辺文雄の真意を探ろうとするがなかなか尻尾をつかませない。ある日、渡辺は凄腕の殺し屋でかつ右翼の・安藤昇を雇い外人が経営する賭博場を襲撃し壊滅させた。

 渡辺文雄が目指したのは所属する広域暴力団の乗っ取りであった。水島道太郎と敵対している引退した右翼の大物代議士・柳永二郎の秘書・今井健二から呼び出された渡辺は、水島と大手不動産会社の重役・金子信雄が絡んだ公共事業に関する汚職事件の証拠を得てこれをネタに組織にゆさぶりをかける。

 その最中、証拠を握る不動産会社の課長・露口茂を誘拐し拷問した渡辺文雄はとうとう逮捕されるが、肝心の露口が自殺してしまい、事件はうやむやになる。

 水島道太郎と裏取引をした柳永二郎は内田良平と渡辺文雄を相打ちにさせ証拠隠滅に成功。渡辺逮捕の直後、容疑者を目前で殺害され、ひとりとり残された丹波哲郎は呆然とするのみ。

 営業的な主役は丹波哲郎だが、実質上の主役は渡辺文雄だ。

 土建屋とやくざと政治家と言えば汚職の三兄弟である。そんな構図に一矢を報いるという主人公のチャレンジは大物政治家というショッカーよりも手ごわい力であっけなく潰されてしまう。何やってんだ!警察!とまあ市井の人としては思うんだが。しかし滅入る結末だねえ。ところでヘコむ丹波哲郎というのは大変に珍しいので見逃さないようにしよう。

 この映画のキーポイントは出演者の格である。特に親分のためなら人殺しも全然平気っぽい今井健二をパシリにしてしまう柳永二郎の圧倒的な迫力の前には水島道太郎と河津清三郎という大正生まれの重厚コンビも絶対に勝てない、まして潮健児に学生服を着せると言う飛道具を使った渡辺文雄や内田良平なんか完璧に歯が立たないのは当然という気がしてくるから不思議だ。

 キャスティングと言うのは物語の展開にとって芝居よりも雄弁な場合がある、特に東映映画では、ということがしみじみと理解できる作品。

2000年07月09日

【追記】

※本文中敬称略


このページのてっぺんへ

■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16