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白鷺


■公開:1958年
■制作:大映
■監督:衣笠貞之助
■助監:
■脚本:衣笠貞之助
■原作:泉鏡花
■撮影:
■美術:
■音楽:
■主演:山本富士子
■寸評:


 山本富士子は元ミスユニバース、ゴージャスな雰囲気で大女優になった人だ。

 商家の娘として何不自由なく育ったお篠・山本富士子が、父親が商売に失敗したために御茶屋に引き取られる。お篠には相撲茶屋の放蕩息子・高松英郎という許婚がいたが、お篠は親が勝手に決めたことだと取り合わない。

 お篠は昔世話になった日本画の大家の愛弟子・川崎敬三と知り合った。彼にも師匠の娘・野添ひとみという許婚がいたが、美人で清楚なお篠に一目ぼれしてしまう。

 金に困った高松英郎がお篠につきまとう。彼女は待合の女将・賀原夏子に借金を頼むが、返済のあては無かった。お篠は芸者になってお座敷に上がるようになる。

 お篠に目をつけた金持ち・佐野周二が彼女を買いたいと申し出た。お篠は必死に抵抗し、川崎敬三も金を工面するために必死で絵を描きつづける。川崎敬三の弟は、芸者に夢中になっている兄を心配する。

 川崎敬三の後援者であった佐野周二の横恋慕はますますひどくなって、とうとう力づくでお篠をモノにしようとする。お篠は仲間の芸者から「命がけで恋を貫け」といわれたのを思い出し、持っていたかんざしで喉を突いた。

 山本富士子と言えば見掛けもキャリアなにもかもゴージャスですよね。ミスコン出身でスタイル抜群、そうですねえいまどきの叶姉妹って感じでしょうか?あんな胡散臭いのと一緒くたにしちゃまずいですね、やっぱ。

 で、この人はお嬢様でも全然似合うわけですが、それが高飛車には決して映らない人です。そこが不思議で、ちょっと見習っとこうかなと思います。こういうのって人柄なんでしょうね、上品でね、ですからこの作品みたいに、お嬢様の流転の人生、ってのはぴたりとハマルんです。

 そのお嬢様が他人の善意や悪意に翻弄されてドロドロのぐちゃぐちゃにされてもなお、白鷺のように清楚で美しい、という実に綺麗な映画です。

 愛した男のために命がけで貞操を守る、男冥利に尽きますな(か?)。そして最期に別れを告げにやって来る姿の怖さと切なさ。やっぱ幽霊は美人でなくっちゃ!ですよねー。

 そんな山本富士子と同じように、世間知らずのボンって役どころには川崎敬三はグーです。彼女の大ピンチにもニコニコ笑ってプレゼント用の櫛をあげようとします。もちろん彼女はその櫛をさす事はなかったのですが。こういう甘いムードの二枚目は悲劇の盛り上げ要員として欠かせませんね。ああ、あんなイイ人といっしょになれないなんて残酷う!って感じ。

 で、ビックリしたのがスケベお大尽の佐野周二。歳食った二枚目が卑屈な役どころに回るとどえらい残忍なキャラクターに変貌するんですねえ、驚きましたねえ。でもなんか似合いまくってたような気もします、お客さんって勝手ですから。

2000年04月30日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16