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股旅三人やくざ


■公開:1965年
■制作:東映
■監督:沢島忠
■助監:
■脚本:野上龍雄(春)、笠原和夫(秋)、中島貞夫(冬)
■原作:
■撮影:
■美術:
■音楽:
■主演:仲代達矢、松方弘樹、中村錦之助
■寸評:


 本作品は監督一人に三人三様の脚本家のシナリオによるオムニバス映画である。

 第一話「秋」。

 役人を叩き斬って凶状持ちになったやくざの仙太・仲代達矢は、賞金を目当てに襲ってきた男と対決して斬る。

 仙太は土地の親分・内田朝雄のところへわらじを脱ぐ。ちょうど女郎のおいね・桜町弘子が男と所帯を持ちたいと包丁をふりまわして大暴れする現場に居合わせた仙太はおいねの監視役を任される。

 おいねは顔もろくに覚えていないその男が自分にほれていると聞いて、ただ嬉しくて足抜けしようとしたのだと告白した。それは街道で仙太が斬った男だった。襲撃の目的がおいねの借金を返済だったと知った仙太はおいねに詫びた。

 仙太は男の弟に自分の居所を役人に通報するように言い、賞金をおいねに届けさせ、押し寄せる関八州の役人たちの群れに斬り込んで行った。一太刀あびて覚悟した仙太の脳裏には無事に逃げ延びたおいねの姿が浮かんでいた。

 第二話「冬」。

 いかさま博奕がバレで逃げ出した老やくざの文造・志村喬が奪ったテラ銭目当てに後を追ってきた源太・松方弘樹は雪深い山奥で若い娘、おみよ・藤純子が一人で暮らしている茶屋にたどり着く。

 百姓のせがれだった源太は父子二人暮らしだったが父親が死んだときまだ子供だったので、地主から「18歳になったら田んぼを譲ってやる」という約束を信じて村を出た。

 数年後、源太が村に戻ると、業突く張りの村人たちが源太がやくざものになったと地主に吹き込んだため彼は田んぼももらえず村から追放されてしまい、グレて本職のやくざになってしまったのだった。

 おみよの父親はやくざ者で母子を捨てて旅に出ていた。文造がおみよの実の父親だとわかると、長年の苦労が溢れ出したおみよは文造に出て行ってほしいと言う。立ち去ろうとした文造を源太が止めた。子供はいつまでも父親が恋しいものだと身にしみていた源太はおみよと文造を家に残して追っ手の前に身を躍らせた。文造は助太刀しようとするが、今度はおみよが文造を止めた。

 激しい斬りあいの最中、源太と追っ手の頭上に大規模な雪崩が襲い掛かった。

 第三話「春」。

 旅がらすの久太郎・中村錦之助は腹ペコのところを村人たちに歓待される。久太郎は村長・遠藤辰雄から、代官所の役人、半兵衛・加藤武がなにかと因縁をつけては金を巻き上げていくので殺してほしいと頼まれてしまう。

 腕に自信の無い久太郎はなんとか言いつくろって断ろうとしたが、夜伽の相手、孤児のおふみ・入江若葉から「村人の役に立つなら自分はどうなってもよい」と言われてしまい困り果てる。

 深夜、村長の息子、勘助・山田人志の狸捕りに付き合って逃亡を図るも、罠にかかったことをしらせる仕掛けで村人に気づかれてしまい、やけくそになった久太郎は「狸がかかったよ!」と泣きながら大はしゃぎするのだった。

 居合抜きの達人である半兵衛と対決した久太郎はまったく相手にされなかった。呆れた村人たちは通りかかったカッコイイ旅人、仙三・江原真二郎に鞍替えし久太郎は村から出て行くことになる。しかしこの仙三というのがトンだくわせもので、半兵衛に百姓たちの計画を密告、あまつさえ小遣いまでもらってトンズラした。

 奮起した久太郎は計画の首謀者として捕縛された村長を逃がし、半兵衛を狸捕りの罠に誘い込んで倒す。約束を果たした久太郎は凶状持ちになった。あとくされがなくて良かったとよろこんだ村人たちに対して村長は「あれは天狗様の生まれ変わり」と言って彼等を諌め、久太郎を称えた。

 時代劇が時代を問わず受け入れられるのは、人間の普遍的な正義感、理不尽な暴力への抵抗、善意、自己犠牲、勇気、義理、人情、無償の愛、そういったものが描かれているからですが、この、いずれ劣らぬオムニバス3作品はそれらが余すところなく描かれます。素直に飲み下せるのはチョンマゲのおかげで生臭さがないからでしょう。

 そして何より素晴らしいのは三人の男性スタア。ニヒルでペシミスティックでパラノイア(おいおい)の仲代達矢、甘えん坊で茶目で可愛い松方弘樹、映画の神様の子供である中村錦之助。他人を寄せつけない美形である彼等は見ているだけで惚れ惚れします。

 一途な女郎の桜町弘子も最高です。相手がどこのどなたであろうとも、年収も学歴も身長もそんな事は関係なし。自分を好いてくれる男のために子供を産みたい。なんだかんだ言っても、それって最高の人生なんですよ、女から見て。欲に囚われない、向上心なんかどうでもイイんです、生きていくためには。こういう吹っ切れた生き方、憧れちゃうなあ。

2000年06月03日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16