激突！合気道

■公開：1975年
■制作：東映
■監督：小沢茂弘
■助監：
■脚本：高田宏治、志村正浩
■原作：
■撮影：
■美術：
■音楽：
■主演：千葉治郎（矢吹二郎）
■寸評：

　合気道を確立した植芝盛平・千葉治郎の半生記。

　植芝は北海道開拓団のリーダーとして、やくざまがいの土木屋から逃げ出してきた少年・安藤一人を助けた。土木屋に雇われていた用心棒、名取新兵衛・千葉真一と対決した植芝はこてんぱんに叩きのめされてしまう。

　このとき、とばっちりを受けて負傷した旅の女・小泉洋子と、ふとしたはずみで凶状持ちになった新兵衛は逃避行。植芝は剣術の達人である源蔵・大塚剛の紹介で超有名な武術家に弟子入りする。

　その頃、警察署の武術師範のクチを植芝に取られたことで逆上した源蔵は署長に抗議しに行ってブチキレてしまい警官数名を殺傷、逮捕されてしまう。植芝はさらに腕を磨くために武者修行の旅に出る。

　植芝は新兵衛の実兄・小田部通麿と対決した際、ついうっかり殺してしまい、彼の弟子たちから命を狙われる羽目に。弟子をとり、一端の道場を構えた植芝に次々と刺客が襲いかかる。兄の敵討ちのためにやって来た新兵衛との一騎打ちを決意した植芝に、源蔵の卑怯な銃弾が！

　さて、この映画の主演は千葉治郎さんです、と念を押しておかないとどっちが主役だかわかんなくなっちゃうようなお兄さん・千葉真一の大活躍。自己顕示欲の弱いスタアというのはなかなかいないわけで、その点、とことん人のよさそうな弟さんとしてはお兄ちゃんの活躍には歯止めがかけられなかったのでしょう。

　仮にも弟さんの主演映画ですから兄ちゃんとしては花を添えてあげようって気が少しはあったというわけでしょうか？愛弟子の志穂美悦子を治郎さんに弟子入りさせますが、この弟子ったらめちゃくちゃ強くて、追っ手の前に仁王立ち「かかってきなさい」とドスの聞いた台詞でバッタバッタとなぎ倒してしまうのです。

　誰か治郎さんを本気で盛り上げてくれる人はおらんのかい！とやきもきしてたら、いました！渡瀬恒彦が。植芝が旅の途中で出会う剣の達人。しかし植芝、道場の窓から渡瀬の姿をノゾキ見するだけ、で、渡瀬恒彦は無言で殺陣を披露するだけ。え？なになに？こんだけなの？こんだけのために渡瀬恒彦をわざわざ呼んだわけ？これじゃあ渡瀬恒彦だけがやたらとカッコよくて、肝心の治郎さんがただの引き立て役じゃん！プンプン！

　こうなりゃ大塚剛に頑張ってもらうしかないぞ。石橋雅史のように渋く決めてくれい！と期待もむなしく大塚剛は剣の達人というキャラクターのくせにイキナリ飛道具！しかもその銃弾をこともあろうにお兄さんのほうに当ててしまうというミステイク、許さん！

　千葉治郎、その後、矢吹二郎と改名しお兄ちゃんの呪縛から逃れようとした気配はありますが結局いなくなってしまいました。この映画を見る限り、千葉治郎は本当に華がありません、が、とことん人柄が良さそうです、きっと欲のない人だったのでしょう。スタアとしては成功しなかったかもしれませんが友達になりたいのはどっち？と聞かれたら「治郎さん」ときっと私は答えることでしょう、欲得抜きで。

（2000年05月20日）

【追記】

※本文中敬称略

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