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怪猫 呪いの沼


■公開:1968年
■制作:東映
■監督:石川義寛
■助監:
■脚本:石川義寛
■原作:
■撮影:
■美術:
■音楽:冨田勲
■主演:内田良平
■寸評:同日公開「怪談・蛇女」


 佐賀藩の城主、竜造寺高房・島田景一郎と清姫・岡田千代は家臣の鍋島直茂・内田良平の謀反により、高房は生きたまま土壁に塗りこめられ、清姫は直茂に犯されそうになり愛猫・タマと一緒に沼に身を投げる。それ以来、その沼は「呪いの沼」と呼ばれて誰も近づかなくなった。

 十年がたち、佐賀藩では前城主の追善法要が営まれていた。直茂は家臣、津山・松村達雄の娘、雪路・御影京子を見初めて城へ奉公させるように家来の主膳・名和宏に命じた。雪路には丈之介・里見浩太郎がいた。

 主膳の腹心、右近・菅原文太は腕ずくで雪路を城へ連れてこようとするが、丈之介と雪路は追っ手を逃れて呪いの沼に迷い込む。そこで全身びしょぬれの猫を拾った雪路は家につれて帰る。

 とうとう丈之介とかけおちしようという晩、家の周囲は右近たちに取り囲まれていた。そうとは知らない雪路はタマが必死に鳴いて止めようとしたのに気づかず、裏口から外へ出たところを誘拐される。密告したのは丈之介の家の下男・沼田曜一だった。

 雪路の父、津山は丈之介に雪路の説得を依頼するが、二人の決心は固く、すでに丈之介が無事に逃げられるように自害した母親との約束もあり、丈之介は雪路と一緒に逃げようとする。津山は娘と丈之介を逃がすために斬られた。

 二人は再び呪いの沼にたどり着いたが主膳たちにあえなく斬り殺される。だが死体はとうとう発見できなかった。

 清姫、雪路、丈之介らの怨念の血をなめてパワーアップしたタマは城中の日向の局・八代万智子をかみ殺して死体を床下に隠して彼女になりすまし直茂に接近する。

 女好きの直茂は毎晩、大奥へ入り浸っていたが再三、化け猫に襲撃されノイローゼ気味になり、何かとインネンをつけては家臣や腰元をバカスカ手討ちにしてしまい手におえない。おまけに死んだ者たちの生首が団体で寝所に現れたりするのでもはや発狂寸前。

 一度は加持祈祷で直茂を回復させた主膳もこのまま大将がパーになれば藩は自分のものになるという局面に欲を出し、可愛い妹の百合・三島ゆり子を妾に差し出す約束をする。生娘には全然見えないのだが実は生娘だった百合はショックで自害。そこへ再びタマが登場し、今度は百合に化けて直茂に接近。

 ジャンボな百合の怨念力も得たタマはもはや無敵。化け猫の百合は念力で直茂の嫡男を池に突き落とし、呪いをかける。いよいよクライマックスとなり、主膳の欲目がピークに達したとき、直茂は完全に発狂、主膳や右近などおびただし数の家臣や腰元を惨殺した直茂はついに百合に喉を噛み切られ呪いの沼に沈んだ。

 復讐を終えて死んだタマはただ一人生き残った雪路の母親の手によって墓を作ってもらう。丈之介と雪路は朝日をあびて成仏するのだった。

 今までの化け猫映画でも大奥が舞台だったが、肝心な何かが欠落していた。そう、それは大奥の本来の目的である子作りのための夜伽シーンである。本作品ではそこいらへんがきちんと、というかじっくりと描かれる、というかそっちのほうが目的なんじゃないか?と思うくらいだ。

 だって、ねえ、化け猫になるのが八代万智子と三島ゆり子だもん、当然じゃない?腕に剛毛の生えた三島ゆり子と内田良平のベッド、じゃなかった布団シーン(?)なんてもう、笑うしかないぞ。それに八代万智子は自分の死骸を掘り起こして腕をむしゃむしゃ食うのだ。女優残酷物語とでもいえようか、だけどなんだかやってるほうが楽しそう、というかふっきれてるのが素敵。

 でもってこのタマという猫はなかなか知能犯なのだ。大怪我をして逃げ込んだのは雪路の実家。そこで雪路の姿に化けて娘の死を知らない母親に手当てしてもらうのだが「娘が生き返ったとぬか喜びさせてごめんなさい」と真相を報告してちゃんと謝るという生真面目さ。つまりこの映画における化け猫はやけっぱちになった畜生ではなく、完璧な善玉。

 だからこそ意外なのは、内田良平の息子を父親の手で惨殺させるシーンだ。発狂してるっていう設定だし、はっきりと出てくるわけじゃないけど刀でザクザク刺す音がしたり、子供の手が痙攣するのって見てて吐きそうなくらい不愉快。そりゃね、歴史上の事実としてはアリかもしんないし、一族根絶やしってのが清姫の目的でしょうけど、だからって子供殺すのは駄目ですぜ、映画といえども絶対に。ゆえに後味がめちゃくちゃ良くないんだな、これ。

 作り物の映画でも、やっていいことと悪いことがあると思うんだけどなあ。

2000年07月15日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16