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怪談 累が淵


■公開:1970年
■制作:大映
■監督:安田公義
■助監:
■脚本:浅井昭三郎
■原作:
■撮影:
■美術:
■音楽:
■主演:石山律
■備考:大魔神、素面で登場!


 本作品の安田公義監督はかつて中村鴈治郎(二世)を主演にして「累が淵」を撮っている。

 按摩の宗悦・石山健二郎が貧乏旗本・伊達三郎の家へ借金取立てに向かったところ、まさに殿様はアバズレのおくま・笠原玲子と浮気の真っ最中。ふすま一枚隔ててじっと聞き耳を立てている病弱な妻は腹イセに宗悦にモーションをかけてくる。

 ついフラフラっとなった宗悦は不義密通のいいがかりをつけられて旗本に惨殺されたうえに死体を累が淵に捨てられる。宗悦は幽霊となって屋敷に舞い戻りそれを見た旗本は発狂して死んだ。一部始終を見ていたおくまは旗本が宗悦の死体から盗んだ財布を横取りして逃亡。

 死んだ宗悦には二人の娘がいた。長女のお志賀・北島マヤは料理屋で働き、大人しい次女のお園・丘夏子は宗悦の世話をしていた。宗悦が死んだと聞いたお志賀は火鉢に隠してあった金を強奪し奉公先の店を居ぬきで乗っ取った。

 旗本の一人息子、新五郎・石山律はおくまから金を取り返したが、怒ったおくまは新五郎とツルんでいたチンピラ・橋本力山本一郎を宗悦の家に向かわせた。金が目的で宗悦の家に押し込んだ二人は留守番をしていたお園を犯した。

 新五郎はひょんなことからお志賀と知り合い恋仲になる。ヨタカに身を落としていたおくまに再会した新五郎は金を返せと迫るおくまを叩き殺してしまい、地廻りどもに追い掛け回されるハメに。

 新五郎は逃げ込んだ女郎屋で薄気味の悪い女郎に出会う。新五郎が身の上話をして出て行った直後、女郎は首をつって死んだ。女郎はチンピラに売り飛ばされたお園だった。

 女中として前の女将をこき使っていたお志賀は彼女に熱湯をかけられて顔に大火傷を負う。お志賀の店で下働きをしていたお久・水上竜子が新五郎とデキてしまい嫉妬に狂ったお志賀はチンピラに命じて新五郎を襲撃させるが返り討ちに。お志賀は新五郎に階段から突き落とされて絶命。

 お久と新五郎はいつのまにか累が淵にたどり着いていた。そこでお志賀、宗悦、お園と次から次へと幽霊に襲撃された新五郎はうっかりお久を殺してしまい、自分も淵へ引きづり込まれ溺死した。

 なんともはやここまで色と欲とがダンゴになるともう笑うしかないな、って感じだ。この映画で唯一のマトモな、かつ同情に値する人物は、イキナリ犯された上に、これまた知らずに親の敵の息子に抱かれて大ショックの挙句に自殺したお園さんくらいなモンで、あとは遅かれ早かれ生身の人間か、幽霊に殺されてしまえ!的人でなしキャラのオンパレード。

 主役の石山律は、この因果応報物語の原点である按摩を演じた石山健二郎の実子、信じられないかもしれないが本当だ。なんであんなタコ坊主みたいなのから、結構美形な子供ができるんだ?という現実のミラクルはさておき、ともかく最終的には石山(父)の手によって石山(子)は溺れ死ぬのだ、ああ、なんて怖い展開だろうか。

 で、もう一人見逃しちゃならないのが「大魔神」と「妖怪大戦争」で着ぐるみに入っていた橋本力。どうしてもさ、あの眼光鋭い目に注目しちゃうわけよ、だってあの目を見れば「あっ!」と気が付いちゃうし、なんだか妙に親近感が沸いたのって私だけ?別に素面でほかの映画にもいっぱい出た人なんだけど本作品では活躍シーンも多いからよーく観察してみよう。

 ちなみに「大魔神」かつ「ダイモン」である橋本力は「大魔神」「大魔神怒る」では素面でも登場しているので探してみよう、ってどうやって探すんだ?だからまずこの映画を観て顔覚えておきなさいっつーの。

 この映画でちゃんと幽霊に「殺された」のって石山律くらいなもんなのよ。あとは発狂した挙句の事故死か、または単なる殺人か業務上過失致死だもん。これって本当に怪談映画って呼べるのかしら?というくらい。とにかく生臭い愛憎ドロドロで全然涼しくない。ただでさえ暑い夏にさらに暑苦しい怪談映画ってのもまた一興?ヤだけどさ。

2000年07月29日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16