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怪談 一つ目地蔵


■公開:1959年
■制作:東映
■監督:深田金之助
■助監:
■脚本:村松道平
■原作:
■撮影:
■美術:
■音楽:
■主演:若山富三郎
■備考:祝!若山先生、東映(第一回)入社!


 女房に死なれた盗賊が生まれたばかりの赤ん坊を通称・一つ目地蔵の足元に置き去りにして、さる旗本の屋敷に仲間と一緒に押し入ったがそこの息子に腹を刺されて瀕死のところを仲間に見捨てられて死ぬ。その仲間はアシがついては困るということで捨てた赤ん坊を始末しようとして失敗し取り落とした合口で赤ん坊のほっぺたに傷をつけただけで行方をくらます。

 旅芸人一座に拾われた赤ん坊は、お浪・千原しのぶと名づけられ水芸の人気太夫に成長。その太夫にぞっこんほれ込んだのが貧乏旗本の京之介・若山富三郎。太夫は京之介と相思相愛になるが京之介のほうは、裕福な商人・富田仲次郎の娘、お絹・花園ひろみに浮気してしまう。

 太夫が必死に隠していたほほの傷をネタに太夫を強請っていた伊助・田中春男は京之介とお絹を夫婦にしてしまえばたんまり小遣いが入ると目論み、太夫を一つ目地蔵の近くに誘い出し刺し殺して死体を沼に沈め、太夫は恋人にフラれたのを苦にして入水自殺したという噂を流す。

 実はお絹の父親である商人はかつて盗賊で、太夫の父親を見捨てた相棒なのだった。また、京之介は押し込んだ旗本の家の一人息子だったということが判り、欲に目の眩んだ伊助ともども親の怨みを背負って殺された太夫の幽霊に追い詰められて行く。

 親の因果が子に報い、ってのは「累が淵」とシチュエーションが似てるしヒロインの顔に傷があるというのも同じ。大人になって大きくなってしまった顔の傷が恋人にバレると嫌われるのではないかと怯えた太夫が、京之介に迫られたとき行燈をふっと消すところがなんとも切ないところだ。

 とにかく本作品は正味1時間ちょっとの間に、複雑な因果を説明し、親子の幽霊を出し、伏線はってオチをつける、というかなりスピーディーな展開である。しかもクライマックスの「祟り」シーンでは水芸の舞台装置である奈落を使ったり、火事出したりとビジュアル的にも盛りだくさん。

 日本の幽霊映画は概ね被害者、というか幽霊から見れば加害者側の罪悪感が根源であるから、申し訳ないと思いつつ断末魔に抵抗する姿が時に滑稽でもあり、リアルである。そこんとこ田中春男って上手いんだよなあ。イイとこのぼん役から下衆なチンピラ、三枚目までなんでもこなす。この人なんかもっともっと高く評価されてもイイのにね。

 若山富三郎と怪談映画の縁は深い。新東宝時代の「鬼火の沼」では正義派だったが、「四谷怪談」は白塗りの伊右衛門、後に東映で「お岩の亡霊」ではひげ面の暴走特急と化したワイルドな伊右衛門、生涯に2度も伊右衛門を演じたのは映画とテレビをまたにかけた天知茂くらいのもんじゃないだろうか。しかしずいぶんイメージがかけはなれた二人だなあと思いません?

 新東宝の若杉嘉津子、東映の千原しのぶ、洋風と和風の違いはあれどこの二人の幽霊に憑り殺されるならちょっぴり嬉しい?わけないんだけど本当に美人って化粧次第で物凄く怖くなるんだよね。で、その美貌を傷つけられたとあっちゃあ、許さないわ!とばかりに怒りのオーラも3割くらい増量するのがすんなり理解できちゃう。

 で、なんというか筆者が嫌いなのが花園ひろみだ。たいした美人でもないくせに生意気な小娘だぜまったく、何様だと思ってやがる(役柄の話ですからね、念のため)! おめーなんか親の財産がなけりゃ鼻もひっかけられねーよ、ふんっ!とまあ千原しのぶを応援したくなっちゃうシチュエーションでは最高の敵役。千原しのぶもそのへん心得てるからいっぺんは沼に引きづり込もうとするし、ついでに錯乱した若山富三郎に斬られてしまえー!と叫んだのだがそこまでしちゃ可哀相だと思ったのかただ一人生き残る。

 だけど結局のところ一番の被害者ってこの花園ひろみだったのかも知れないよね。なーんにもしてないのに怖い思いさせられて、恋人も親も死んでしまうし財産無くすし散々だもん。

 こらしめられるくらいなら反省したほうがイイ、怪談映画ってのは恐怖を以って道徳を啓蒙するんだよね。

2000年07月29日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16