ノストラダムス戦慄の啓示 |
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■公開:1994年 |
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素人が自分の金で好きなことをやっているのをとやかく言うのは野暮というものだが、ここまで無茶苦茶なのは面白すぎる。宗教団体関係の映画に出る以上、少なくとも広告塔としての役割を担うわけだからその後の俳優生命への多大な影響というのも考慮して然るべきなはずであるが、この映画の出演者たちはさて、どうだろう? ノストラダムスの予言の書を実写を交え、ジオラマとCGをふんだんに使用してビジュアライズ。アジアの某国がミサイルを日本めがけてぶちかますのを、ある神様を信じる人々の祈りが救うという壮大なスペクタクル映画、、、ちょっとプレスシートっぽく書いてみました。 ノストラダムスの予言が的中してるんじゃないか?という過去の事例の紹介まではまあなんとなく分かるし、「日本にいる救世主」っていうのが、どこの詐欺師、、じゃなかった、どこの誰だかもおおよそ見当がつく、というのも本作品はさる大手宗教団体様の宣伝映画だからなんですがそれにしては、その、いったいどれだけ本気で宣伝する気があったのかいな?と疑問な個所があるんですね、これが。 まず、信者でなければ、いやさ、たとえ信者であってもそういうプライベートなことは包み隠しておきたいわ、という人はこういう映画には出ませんから、キャスティングの苦労はしのばれるものがあって余りあるところです。 そこで充実しているのがCGです。なにせ新興宗教団体様でございますから金に糸目なんかつけないわけで、でも実際は結構細かいんじゃないか?とは思いますが、美術に木村威夫なんか呼んじゃったりなんかして実写の部分も見ごたえありますよ、当時としては。 さて、今回、制作を請け負ったのが東映(東京)であるというところからこの映画の意図は製作者の体を離れて、、ウルトラQよりももっと異次元に突入してしまうのです。 まず神様「業界」の総元締めみたいな神様がいて、実は神様の世界も民族別になっている、と。それでは日本はどうなのかというと、「わんぱく王子の大蛇退治」でもおなじみの高天原が実在していて、そこにいる神様たちがそれぞれの地域担当重役みたいなことをしているんですね。 神様の仕事は人間界に適宜、神様を転生させて悪(地獄)が発展するのを防ぐ、ということらしいです。が、しかし。この日本の神様方が凄い面子なんですね。支店長らしき神様が南原宏治なのは関係者なのでともかくとしても、以下、誠直也、江見俊太郎、渡辺哲、石橋雅史、阿藤海、、、、なんだコレ?やくざ映画のキャスティングじゃないの?と知ってる人は大笑いできるわけです。 あの団体の人たちは「仁義なき戦い」とか「網走番外地」とか「女必殺拳」とか全然観た事無いんでしょうねきっと。あーゆー映画を見てた人なら神様なんか信じる暇と金があったらパチンコに直行しちゃいますからね。 迷える人々のほうは、まだイイんです。石井めぐみ、荒谷公之、下塚誠、という毒にも薬にもならないタイプですし。 そしてキャスティングで最もマニアックかつ意味不明だったのはノストラダムス本人が大月ウルフだったってことです。ビジュアル的に適役なのは理解できますけど、「レインボーマン」の電流人間・エルバンダ、かつ、「大鉄人ワンセブン」のハスラー教授なんですよ、多くの人にとっての大月ウルフは。 そーゆーのも見てないんですかね、あの団体の人たちは。これじゃあ観たお客さんから「おまえら『死ね死ね団』か『ブレイン党』なんじゃねえの?」という印象を持たれてしまうんじゃないかと他人事ながらとても心配してしまいます。 なんせホラ、「レインボーマン」て新興宗教が日本経済を破壊しようとしたりとか主人公が発狂して精神病院送りになるとかものすごいストーリーばっかだったでしょう?「大鉄人ワンセブン」だって、なんでいまどきナチスかなあ?と、当時ですらその時代錯誤的なセンスが素敵だったし、後半は第三世界の宗教が敵役だったし。そういえば両方とも平田昭彦(様)が悪役、、、、あっ、もしかしたらあの団体にすげー平田昭彦(様)のファンがいたりして?(ちがう、ちがう) 私がもしあの団体の人だったら「なんだこりゃ?」の一言でこのキャスティングは潰しますけどね(でも観たいけど)。残念ながら私はあの団体とは何の関係も無いですから、「この女神様ね、小川知子じゃ弱いから杉本美樹にカムバックしてもらったら?」ぐらいのトンでもない発言をしてしまうかもしれません、というか、どーせならそれくらいしてほしかったなあ、新規信者の獲得のために。 世間を知らないってのは恐ろしいことです。まず映画を作りたいと思ったならばとりあえず委託する先の会社がどんな映画を作ってきたかどうかちゃんと調べたほうがイイってことですね、教訓。 (2000年05月13日) 【追記】 |
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※本文中敬称略 |
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file updated : 2006-08-17