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ガンマ第3号 宇宙大作戦


■公開:1968年

■制作:東映

■企画:扇沢要、太田浩児

■監督:深作欣二

■助監:山口和彦

■脚本:金子武郎、ラム・フィルム

■原作:

■撮影:山沢義一

■美術:江野慎一

■音楽:津島利章

■主演:ロバート・ホートン

■備考:「宇宙からのメッセージ」のルーツがここに!(な、わけがない)


 地球を壊滅できるだけの質量をもった遊星・フローラが衝突しそうだという事が2週間前にならないとわからなかった馬鹿な米国はあわてて優秀な宇宙飛行士、ランキン・ロバート・ホートンを宇宙ステーション、ガンマー第3号に派遣しそこを基地として遊星を爆破させる計画を立てた。

 作戦完了までのタイムリミットはたった10時間、普通なら断るところだがそれじゃ映画になんないのでランキンは早速出発する。ステーションの司令官であるエリオット・リチャード・ジャッケルはランキンのかつての親友だったが、エリオットがある作戦でミスをして以来、二人はなんとなく疎遠になっていたという波乱含みのスタート。

 ステーションに到着したランキンを出迎えたエリオットは早速、この作戦に宇宙アドバイザーの博士を同行するか否かを巡ってバトル。そこに割って入ったのが美人女医のルイズ・ルチアナ・パルッチで、野郎二人はこの女をめぐって恋のバトルの経験もあり、というイキナリ風雲急を告げるの図。

 ともかくフローラに到着した一行は爆破作業の段取りを粛々と進める。みんなが働いている最中に生物らしきドロドロのスライムを発見した博士は「持って帰りたい」と大暴れ。冷静なランキンは得体の知れないバッチイものをむやみに拾ってはいけませんという考え方だったのでとっとと捨てるように命令。しかし投げ捨てた容器からとびちった飛沫が博士の宇宙服にこびりついてしまったのを見逃してしまう。

 爆破作戦は見事に成功。外から帰ったらちゃんと手を洗う、そんな清く正しい両親の教育を大人になっても実践していたランキンは宇宙服を徹底的に消毒するよう博士に命じるが、博士は助手に押し付けてしまう。

 作戦成功の祝賀会で、ほとんど半裸に近いようなコスチュームのルイズやキュートな看護婦・キャッシー・ホーランに見とれていたランキンとエリオットのところへ消毒作業中の助手が全身黒コゲになって発見されたというトンでもない報告が。。

 謎のスライムが一つ目の直立イカ怪獣に成長していたのだった。おまけにこの怪獣ときたらネズミ算なみのスピードでばかすか増殖、たんに無気味なだけじゃなく、長い手足の先は超強力なスタンガンと化しているという凶暴なヤツ。

 こんなモンが地球に来たらえらいことになると思ったランキンは狭いステーションの中を縦横無尽に逃げ回る無数のバケモノの弱点が熱であることを突き止め、まとめて処分するためにステーションを大気圏に突入させて燃やしてしまう作戦を敢行する。

 「俺の船に何するんだ!」と、まるで「スタートレック(邦題は「宇宙大作戦」)」の初代船長だったジェームズ・T・カークのような台詞を吐くエリオットであったが、最後は男気を炸裂させて、ピンチになったエリオットを助けるために犠牲になるという、まるで東映ヤクザ映画のナンバー2のような(いや、実際そうだが)活躍を見せて最後に味を残す。ステーションは宇宙怪獣もろとも消滅し、乗員たちは無事に脱出、地球の危機はエリオットの尊い自己犠牲により回避されたのである。

 日米合作、って言えば大概は米国ロケがあって、あっちのテレビ俳優が出て来て、というのが相場だと思うのだが、本作品は宇宙ステーションが舞台なので全編セット撮影、出演者の中には日本常駐の外人俳優も多数出演、特撮は東映が誇る日本特撮映画株式会社と東映テレビ部のスタッフが担当、というわけでつまりオール外人俳優の国産東映特撮映画なのである。

 ハリウッドスターのカメオ出演とか、イエローストーンあたりの雄大な自然をバックに、巨大な機械獣が出てきたりなんかして、とアレコレ期待しちゃった輩がいたら、それは期待するほうが間違っています、と言い切ってしまおう。

 実態はどこを切っても東映テレビ特撮番組という風情、なんともいわく言いがたいテイストなのである。

 のっけから宇宙局に勤務する女性職員がミニスカで、そこんところを正面からローアングルで撮影するというパンチラ狙いのカットが挿入されるなど随所に意味不明だが、とりあえず、外人さんそのものが日本人から見ればすでにSFであるから、映画トータルで見れば、米国人が大好きな自己犠牲のオチもついてるし、あともうちょっと女性陣の衣装が色っぽかったらグッドなのに、という程度でそれほどの破綻やトホホはないので安心しよう。

 この映画はものすごく生理的に気持ちが悪い。そこがだんだん快感になっちゃうんだが、それはさておき、あの謎の怪獣が大量発生するところ。ぐちゃぐちゃのスライムからボコボコ湧き出てくる様子は子持ち蛙の背中で孵化するオタマジャクシと同じくらい寒イボが全身に出てくるのだ、あたしゃアレ、すごく苦手なんです。

 一つ目怪獣の目玉に突き刺さるレーザー銃、そこから緑色の大流血!というか体液が噴出してんだけど、体液が緑色のわりになんで目だけ充血して赤いんだろう?などなどツッコミどころは有り余っていておまけにいずれもエグくてたまんないのだ。

 深作欣二の監督作品というところで腰抜かすが、さらに助監督が「死体一個にバケツ一杯」の血のりをぶちまけるサービス精神旺盛な山口和彦と聞いてなんとなく大納得だ。

 万事健康健全な東宝特撮とは一味違う、バイオレンスでエグい特撮映画を堪能しよう。出演者は一人残らず外人さんだが台詞はオール吹き替えなのでちびっこが見てもちゃんと何喋ってんだかがわかるから安心だよ。

2000年07月24日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2004-10-10