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アマゾン無宿 世紀の大魔王


■公開:1961年
■制作:ニュー東映
■監督:小沢茂弘
■助監:
■脚本:松浦健郎
■原作:
■撮影:
■美術:
■音楽:
■主演:片岡千恵蔵
■備考:御大、発狂す!


 東映(東京)の映画はときどきわけがわからないことがある。

 ニューヨークでは外人やくざどもが高度経済成長の日本を賭博王国にしてしまおうと会議中である。東映のやくざ映画を見るなど勉強熱心な彼等に工作員として選任されたのはアメリカ生まれのゴールドラッシュの熊吉・進藤英太郎というイカレた博徒だった。

 その頃、エジプトでは中近東のやくざ(いるのか?)が同じく日本進出をたくらんでいた。さらにフランスや東南アジア諸国でも同様の計画が進行中、日本を舞台に世界ギャンブル戦争勃発の機運が高まった。

 横浜港にソンブレロをかぶった男がやって来る。彼の名前はアマゾンの源次・片岡千恵蔵、どっからみてもデカイ顔、じゃなかったアブナイおじさん。彼はホテルの地下にある違法賭博場で熊吉、スペードのジャック・江原真二郎と遭遇し意気投合する。

 三人組を雇ったのは麻薬密輸組織のボス、竜・月形龍之介とその手先でホテルの社長・三島雅夫。竜の秘書、玉琴・久保菜穂子はある晩、竜を暗殺しようとして突如発狂する。

 竜が麻薬取引の相手に選んだのは新興宗教の教団を隠れみのにしているやくざの西園寺・小沢英太郎。しかし竜の本当のねらいは西園寺が経営している教団をそっくり頂くことだった。

 西園寺の部下、進次・梅宮辰夫は西園寺の娘・三田佳子とラブラブ。竜が西園寺を暗殺しあまつさえ娘の命まで狙っていることを知った進次は元彼の先輩で裏切り者の橋爪・山本麟一に殺されそうになったところをジャックに助けられた。

 増沢(松沢?)精神病院にキチガイのふりをして潜入した源次は玉琴と一緒に逃亡、玉琴の実妹・佐久間良子が経営しているOKI(OK?)牧場に身を隠す。すっかりウエスタン気分を満喫した源次は熊吉、ジャック、合流した進次と一緒に、竜と各国やくざが終結している教会に殴り込みをかけるのであった。

 片岡千恵蔵がソンブレロ(特注?)を頭にハメて出てきただけで腰抜かしますが、さらに観客の度肝を抜いたのは精神病患者になりすました片岡千恵蔵が病院で大暴走することです。電気スタンドを纏のように振り回してギャハハハー!と勧進帳の弁慶のような片寄り目で狂ったように(というか発狂してるんですが)踊り狂うのです(ようするに発狂しているんですが)。

 その病院の入院患者も凄いです。南利明トニー谷由利徹海野かつを佐山俊二ら東日本アチャラカ喜劇人総出演の様相です。その中にやたらと喧嘩ばかりしている二人組がいて一方はテレビ俳優、もう一方は映画俳優だった、という下世話なギャグもあってわけわかりません。

 肝心の「ニッポンギャンブル大国化作戦」ですが、工作員たちはもっぱらカジノで働くバニーガールの発掘に精を出しているようなありさまなので成功するはずがハナからないのでした。

 やくざが宗教を騙るというのももはや笑えないギャグですが、かようなブラックお笑いシーンが繰り広げられるアブソリュートリーな世界にありながらいつものように大人の風格を漂わせている月形龍之介の「染まらない」存在感は一服の清涼剤のようでありました。

 片岡千恵蔵、進藤英太郎、江原真二郎は久保菜穂子にそれぞれアタックするわけですが、ハンサムな江原真二郎はともかく、残りの二人はどう考えてもヘンです。しかしその程度のヘンはこの映画では吹けば飛んでしまうので「ま、そーゆーのもありかも?」という気分にさえなります(うそです)。

 で、肝心の「世紀の大魔王」ってのは一体なんだったんでしょうか?それについては何も語られることは無いのですがそんなことすら「どうでもいいんじゃないか?」という気分にさせられるのです。

 映画のテーマとか、作り手の主張とか、んなものは説教好きなアメ公にでもまかせて、ここはひとつなあんにも考えないでご覧くださいまし、というか、なにか考えながら見るとチト辛いぞ。たとえば「なんでこんな映画見てるんだろう俺」とか、さ。

2000年06月10日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16