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あれが港の灯だ


■公開:1961年
■制作:ニュー東映
■監督:今井正
■助監:
■脚本:水木洋子
■原作:水木洋子
■撮影:
■美術:
■音楽:
■主演:江原真二郎
■備考:


 韓国の領海ラインぎりぎりで危険な操業を続けていた底引き網漁船団のうち一隻が拿捕され、逃げ延びた第一日乃丸の乗員が銃撃を受けて射殺された。第一日乃丸の漁労長・山村聡は弟・中山昭二とともに死んだ船員の通夜へ出かけた。

 第一日乃丸に乗っていた秀夫・江原真二郎には恋人・安田千永子がいる。広島出身だと自称している江原真二郎はある日、小学校時代の同級生、石田・高津住男に出会う。なぜか高津の前では遠慮している江原真二郎を励まそうと親友のシゲ・岡本四郎は江原真二郎を赤線へ誘う。

 韓国籍の売春婦・岸田今日子と出会った江原真二郎は岸田今日子に国籍を見破られる。江原真二郎は高津住男が自分の国籍を恋人に喋ってしまうのではないかと不安になるが、高津は絶対に喋らないと約束し、差別を怖れるなと説得する。

 しかしすでに山村聡は江原真二郎の母親からの手紙でその事実を知っていたのだった。それでもなお以前と態度を変えなかった山村聡に安心した江原真二郎は仲間に真実を知られても同じ船に乗ることを決心した。

 韓国領海内で操業中、韓国の警備艇に発見された第一日乃丸は遁走しようとしたが、網がスクリューに絡まってしまう。網を切断するために江原真二郎、高津住男、そして父親を韓国の警備兵に射殺された少年・浅沼創一が海に飛び込む。

 長時間、潜水しすぎて失神状態になった浅沼創一を江原真二郎が助け上げた直後、第一日乃丸は韓国の警備艇に横付けされる。必死に脱出を試みた第一日乃丸に、一人の韓国軍兵士・木村功が飛び込んでくる。船員たちに取り押さえられた木村功の通訳を命じられた江原真二郎は国の様子などたわいもないことを会話するが、言葉がわからない仲間にはそれが密談と見えた。

 とうとう警備艇に追いつかれた第一日乃丸からは次々に船員が海へ飛び込み、救助にかけつけた海上保安庁の巡視艇に乗り移った。取り残された江原真二郎は必死に仲間の後を追った。しかし続々と乗り込んできた韓国軍兵士に銃撃され「半日本人」と足蹴にされて死んだ。

 助かった仲間たちは、親友だった岡本四郎も、それまで理解を示してきたはずの高津住男も、江原真二郎のことを「裏切り者」だと口々に罵った。。江原真二郎の死体を乗せた第一日乃丸は彼等の目の前を曳航されて行った。ただ一人、江原真二郎に助けられた浅沼創一だけは江原に感謝し「一生船に乗りつづけたい」と言った。

 領海侵犯というのが実は結構日常的で、冒頭の拿捕される漁船と無線基地がモールス信号だけで会話される状況の緊迫感は手に汗握る。

 民族差別の問題が、ここまで突き詰められると「究極の選択」に近いモンがある。この映画はそういう普段は「見ないふり」「知らんぷり」してるテーマがきっちり見えるように描かれてるところに私としては価値があると思うわけ。

 あと、具体的に怖いなあと思ったのは言葉がわかんないからって「あいつはスパイ!」って今までニコニコしていた仲間が手のひら返すところ。コミュニケーションができないってのはすごく怖いことだなんだね。

 「よく分からない」から「怖い」コレって究極の殺し合いである戦争に発展する最大の原因の一つでしょ?いろんなシーンにはいろんな考え方があるわけで不信から発展する差別の源は「無理解」なんだよね、まず、これが始めの一歩だってことがこの映画見てるとわかる。

2000年06月17日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16