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与太者と小町娘


■公開:1935年
■制作:松竹キネマ
■監督:野村浩将
■助監:
■脚本:池田忠雄
■原作:
■撮影:
■美術:
■音楽:
■主演:三井弘次
■備考:ノロマなデブのドタバタ喜劇。


 本作品は音楽入りのサイレント映画。

 伐木場を経営する喜平治・上山草人と、隣の山で同じく伐木場を営む大男の虎造・山口勇は仲が悪い。というのは喜平治のお嬢さん・坪内美子を嫁にしたい虎造を、当のお嬢さんが「顔見たら唾かけてやるわ!」ってくらい思いっきり嫌っているからで、理由は虎造の顔が怖いからである。もちろん性格も悪いがお嬢さんに強く出られるともじもじしちゃって子分の影に隠れたり(でも山口勇は体が大きいから盛大にハミ出る)なんかするのできっと純情な上に頭も相当悪いと思われる。

 喜平治のところで働いている三馬鹿トリオの三井・三井弘次、礒野・磯野秋雄、阿部・阿部正三郎が虎造から預かってきた手紙には「早く嫁に来ないと考えがあるぞ!」なんて脅しが書いてあったので、いつもドジばっか踏んでる三人はこりゃひとつ虎造をうんと懲らしめてやろうと落とし穴なんか掘るのであるが、案の定、そこに上山草人が落ちちゃう。

 お嬢さんにプレゼントを買ってあげれば喜ばれると嘘をついて虎造に散財させた三人組は、調子に乗ってプレゼントを渡してほしければ洋食をオゴれと虎造にタカりまくってとっとと逃げ出し、してやったりと思った矢先、虎造にとっては目の上のタンコブだった上山草人が事故で死んでしまう。いよいよお嬢さんを我がモノにしようと迫る虎造、が、しかし、そこに割って入ったのはかねてよりお嬢さんの婚約者に決まっていた二枚目の青年・大日方伝

 スカーフェイスで長身、態度もセンスも虎造とは月とすっぽん、きっと頭も良いに違いない。喜平治の後を継いだ大日方を一目見て、こりゃ勝ち目が無いと脊髄反射的に納得した虎造は大日方をだまして呼びだしボコボコにしようとするが、駆けつけた山の仲間と三人組が虎造の手下と大乱闘、ついに虎造一味を追い払ったのだった。

 冒頭のツカミが上手い。三人組がもんどりうって山から転がり落ち、トロッコに乗って宿敵、虎造の山まで一気に運ばれてしまうというスピード感の心地よさ。さらに、借金だらけの三人組が万屋のババアにぶっとばされて、せっかく貰った小遣いを綺麗さっぱり巻き上げられてしまう時の惨めな表情は爆笑モノだ。

 ビジュアル的に一番インパクトがあるのは上山草人。初めてちゃんと顔を拝んだ伝説のハリウッドスター、だが実際はギョロ目にとんがったアゴと主張の強そうな鼻筋がはっきり言って不気味なクシャおじさんだ。

 一番笑えるのが悪漢の虎造。図体はでかいがお嬢さんの事となると、あの馬鹿な三人組にコロっとだまされる。しかも彼はけちなので、そうでもしなければ一財産築ける訳がないのだからスジは通っている、目の前で狂ったように料理を食いまくる三人組を横目に見ながら自分は水で我慢して、時々ぶっとい手でちまちまと財布の中身を心配するのである。

 「和製マルクス兄弟」と宣伝惹句にあるけれど、本家より日本の「ヨタモノ」たちの方がよっぽどのお人好しだ。ブラックジョークはないけれど本当の悪人が登場しない、どたばた喜劇というのは気楽で良いね。画に描いたような悪漢、二枚目、美女、それに馬鹿、こういう分かりやすい喜劇って大好きさ。

2000年01月09日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16