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暴れ犬


■公開:1965
■制作:大映
■監督:森一生
■助監:
■脚本:藤本義一
■原作:
■撮影:
■美術:
■音楽:
■主演:田宮二郎
■備考:しょぼしょぼ刑事。


 天知茂が欠場している時点で、筆者にとってこの作品はすでに終わっていた、と言っていい。この映画は「イカした野郎のスカした映画」でなければならないからだ。

 鴨井大介・田宮二郎は泊まっていたベットハウスのやり手婆・ミヤコ蝶々から宿代滞納を理由に追い出されそうになる。肺病病みの男から小型拳銃をプレゼントされた鴨井は極度の金欠だったので早速これをさばきに行ったが、戻ってきたときにはすでに男は殺されていた。

 男は美人ストリッパー・金井克子の恋人で、一応恩義のある鴨井は死んだ男のかわりに金井を慰めていたが案の定ラブラブに(いつものことですね)。ついにカタギになる決心をした鴨井だったが、男からもらった小型拳銃の出どころを追っている刑事・大坂志郎に付け回される。

 鴨井はドヤ仲間のヤス・芦屋小雁が盗んだハンドバックの中にあったデリンジャー(超小型の拳銃)に興味を持ち、持ち主である高級キャバレーの女社長・草笛光子に接近。草笛の店でホステスしていた馴染みの玉子・坂本スミ子に再会した鴨井は、玉子から暴力団の組長・須賀不二夫が草笛の店を乗っ取ろうとしているらしいと聞かされる。若いピチピチギャルから年増までオールマイティーな鴨井は草笛光子にオネダリされてキャバレーの用心棒に。

 須賀は女をめぐるトラブルで草笛の弟を殺したらしいのだが証拠はない。真犯人を知っている元ストリッパーの踊り子がマネージャー・伊達三郎に殺され、今度はその女と友達だった金井克子の命が狙われると予測した鴨井は草笛に頼んで金井を匿ってもらう。

 草笛を襲撃した伊達三郎が鴨井の愛銃と同一口径の銃で殺されたため、鴨井は殺人容疑者として警察に追われるハメに。人を殺したことがないのが自慢の鴨井としてはなんとしても容疑を晴らしたい。鴨井はマネージャーを殺害した拳銃のライフルマークを確認し、どうやら自分を罠にかけようとしている人間が入るらしいと判断。

 鴨井はキャバレーの倉庫に隠れていたが、鴨井の所在も金井の隠れ家も須賀に筒抜け。須賀の子分に誘拐された金井克子を救出すべく呼びだし状に指定された工場跡地へ乗り込んだ鴨井は、得意の愛銃と悪者一味からかっぱらった小型拳銃をフル活用して、悪者一味を全員戦闘不能にする。

 鴨井を利用して弟殺しの真犯人探しをしていたのは草笛光子だった。金井の証言で真犯人は須賀不二夫と判明。一件落着したが、やくざな性分を再確認した鴨井は金井との夫婦生活よりも愛銃との生活を選んで去って行く。

 登場してしばらくは全然わかりませんでしたよ金井克子。今と全然顔が違うンですもの(これってすげえ嫌味ですから気を悪くしないでくださいね)。西野バレエ団の人達(奈美悦子、由美かおる、原田糸子、江美早苗)って今ならグラビアアイドルみたいなモンだからカラダはいいけど顔はハッキリ言って野暮ったい。好き嫌いは別にして、そりゃやっぱ草笛光子のアダルティなお色気のほうが圧倒的勝利。

 今回はしょぼくれ刑事・天知茂の代打として演技派の大坂志郎が出て来る、これが駄目なのよね。人情派にこーゆースカした役どころなんて無理なわけよ。役として実に上手く演ってても相手が田宮二郎だという点からしてどー考えてもマッチしないってば、いくら森一生でもサ。

 ペーソスとか人間臭さとかそーゆーのが好きな客なら良いかもしれないけど、いや実際上手な人だと思いますけども、「犬」シリーズにそーゆーの期待してる客は来ないじゃん。

 モダンで、お洒落で、カラっとして、生活感ゼロっていうこのシリーズの魅力が、実はしょぼくれ刑事の天知茂にかなりおぶさってたンだ!という事をしみじみ実感できる作品。

2000年01月02日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16