「日本映画の感想文」のトップページへ

「サイトマップ」へ


天草四郎時貞


■公開:1962年
■制作:東映
■監督:大島渚
■助監:
■脚本:大島渚、石堂淑朗
■原作:
■撮影:
■美術:
■音楽:
■主演:大川橋蔵
■備考:


 かつて、大映が「芸術性」にこだわって娯楽映画の大スタアとして活躍していた市川右太衛門、片岡千恵蔵をゲットした東映。今度は「娯楽至上主義」をスローガンに、プロパガンダっぽい作品や文芸作品をコキ降ろした。

 天草の領主・平幹二郎は残酷な性格で年貢を収められない貧乏な百姓をイジメまくっていた。そこへ江戸からもっとサディスティックな役人・佐藤慶がやって来て、こいつがキリシタン弾圧に思いっきり力を入れたもんだから一触即発の状況に。

 彼こそが救世主、と一部で囁かれていた天草の四郎時貞・大川橋蔵は元武士。今ではころびキリシタンの絵描き・三国連太郎の娘とイイ仲だが昔は同じ武士・大友柳太朗の妹・丘さとみが許婚だった。で、その大友柳太朗はキリシタンじゃなかったけど橋蔵の理解者で、牢屋にいる仲間と連絡をとってあげたり、一斉摘発なんかあると事前に橋蔵に情報を漏らしていたので、自然発生的に四郎は救世主と呼ばれるようになっていたわけだ。

 ところがこのパイプが佐藤慶の登場で急に断ち切られたもんだから、百姓の危機感が一気に増大、キリシタンの一斉蜂起を望む声が天草を含め島原一帯に巻き起こる。が、幕府だって馬鹿じゃない。佐藤慶の通報により大群を率いて島原目指して進んでくる。

 自制を促す天草四郎に失望した百姓たちの前に浪人・戸浦六宏が現われ、武芸を指南して扇動する。血の気の多い若者のリーダー・河原崎長一郎はその強さにあこがれて四郎を裏切り、城へ攻め込む。と、これが意外と成功して天草城はあっさりと百姓たちに占領される。

 しかし快進撃もここまで。島原城に逃げた平幹二郎らは内通者として大友柳太朗、テロリスト橋蔵の仲間として実母・毛利菊枝らを捕えて火あぶりに。これらはすべて三国連太郎が拷問に耐え斬れずゲロしたためだ。橋蔵は三国連太郎を斬り、迫り来る幕府の鎮圧軍に対抗すべく玉砕覚悟で立ち向かう。

 なんせね、大川橋蔵と大友柳太朗が延々と喋ってばっかいる映画なんて、面白いわけないじゃん。

 ディベートする柄かよ、二人とも、ってこと。佐藤慶とか戸浦六宏はいいよ、社会派ナレーター系の大島一族なんだから。爬虫類みたいな平幹二郎あたりをゴーカイにたたっ斬ってほしいいじゃない?大友さんには。

 天草四郎の真実って確かにこんなもんだったのかも知れないけど、映画にして面白いかどうかは別問題。大川橋蔵がアカの親玉だった!って説得力無いよ、あの顔だもん。迫力出そうとしてノーメイクにしても生地が奇麗だから余計にあどけなくなるだけ。歌舞伎上がりの映画スタアにそんことしても駄目っしょ、意欲は買うけどさ。

 暗闇に展開する映像の熱気から感じられる作り手のやる気は買うし、キンキラキンじゃない天草四郎というのも一見の価値ありかも知れないし、勝ち目の無い負け戦に「去るものは追わず」の主人公と監督の境遇を重ね合せるのも面白いけど、それって所詮オマケでしょ。

 ということで、大島渚と東映は水が合わなかった(予想通り)、というオチですね、はい。

2000年02月11日

【追記】

※本文中敬称略


このページのてっぺんへ

■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16