勝負犬

■公開：1967年
■制作：大映
■監督：井上芳夫
■助監：
■脚本：藤本義一
■原作：
■撮影：
■美術：
■音楽：
■主演：田宮二郎
■備考：いくら道具が立派でも使う人間の腕次第。

　鴨井大介・田宮二郎は東京へ出て、昼は競艇場で予想屋、夜は流しのアルバイトと、なかなか堅実な生活を送っていた（珍しい）。その真っ昼間の競艇場でやくざが射殺される。やくざの一匹や二匹死んでもどーでも良かったが、頭にバカがつくくらいのディープな拳銃マニアの鴨井は、銃声も硝煙も発光もしないという旧ドイツ軍の軍用拳銃が凶器と知って、がぜん興味がわく。

　玩具輸入業社の社長令嬢．姿美千子と知り合った鴨井は、大阪から歌手をめざして上京してきた玉子・坂本スミ子が就職したキャバレーで、姿の父親である社長を紹介されるがその日から毎晩のように件の拳銃で命を狙われるようになる。それでも美人のお願いにウキウキになった鴨井は姿美千子に頼まれてボディーガードを引き受ける。

　事件に使用された拳銃はレプリカだった。密造組織の幹部・杉田康は部下・藤山浩二が私怨から鴨井を商売品で付け狙っていることを叱責したが、人の言うことなんか聞こうとしない藤山はこともあろうに鴨井と間違えて相棒の常さん・藤岡琢也を撃って怪我をさせてしまう。どうやったら間違うんだよ藤山浩二！全然シルエット違うだろーが！おまえの目は節穴かあ！。

　東京へ出向していたしょぼくれ刑事・天知茂の捜査によると、名前は違うが例の社長は、彼が若い頃逮捕した凶悪犯と同一人物らしい。鴨井に説明するとまた余計な事をすると思ったしょぼくれ刑事は、銃器不法所持のお目溢しと子供の小遣い程度の銭をエサに鴨井に証拠品を持って来させ、確証を得る。

　鴨井のアパートをたずねたしょぼくれ刑事が藤山に撃たれて重傷を負う。大好き（態度は別だが本心は）なしょぼくれ刑事が重体になり完全に我を失った鴨井は搬走中の救急隊員にまでベソかきながら食ってかかる始末。それじゃあ本当に死んじゃうだろうが！鴨井！落ち着け！

　心配でたまらない鴨井はしょぼくれ刑事の手術現場にまで乱入し、社長の正体はアメリカで本物を殺してすり替わったニセモノで、姿美千子が赤ん坊のうちに別れたのを良いことに、ちゃっかり実父になりすましているという事実を知る。

　正体がバレたと知った社長は、愛人の秘書とともに姿美千子を人質にして高飛びしようとする。その前に邪魔な鴨井を消そうと倉庫に呼びだした悪者一味に鴨井の正義のガンプレイが炸裂。そこへ逮捕状を取った警官隊もかけつけて一味は逮捕された。ショックを受けた姿美千子としょぼくれ刑事は順調に回復し、鴨井は大阪へ帰って行った。

　これで終りなんて東映や松竹なら考えられねえぜ！というくらいノリノリの犬シリーズ最終作。

　田宮二郎が歌う「青い犬のブルース」が聞きものだが、ヘタだぞ、正直な話。この後キャバレー回りをさせられた田宮二郎の実人生を予見していたのかもしれんが、この実力ならだいたい想像がつく。もっとずーっと後になって「イエロー・ドッグ」の資金作りで出たバラエティ番組で「時計よ」という歌を披露したときに本人も「僕、声は良いって言われるんですが」と告白していたくらいだから自覚してたんだろうね（気の毒）。

　さて、しょぼくれ刑事が撃たれてしまった時の鴨井のアワテぶりはもう最高！恋女房なくしたみたいに大騒ぎ。自信過剰の二枚目俳優・田宮二郎、一世一代の狼狽演技だ、こりゃあ貴重だぜ！なんせ救急車のスピードが遅いからって運転手の首絞めそうになるからな、死ぬほど爆笑できるぞ。

　歴史に「たら、れば」があるのなら、もっと見たかったなあ犬シリーズ。

（2000年03月11日）

【追記】

※本文中敬称略

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