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四十七人の刺客


■公開:1994年
■制作:東宝
■監督:市川崑
■助監:
■脚本:市川崑
■原作:
■撮影:
■美術:村木与四郎
■音楽:
■主演:高倉健
■備考:あっ!


 ほとんどすべての「忠臣蔵」においては、吉良上野介が浅野内匠頭にいじわるして、それにキレた浅野内匠頭がやむにやまれず刀傷沙汰を起こしたというのが常道だけども、それが実は大石内蔵助による「流言飛語」だったとしたら?

 この映画は、わけわからん内に切腹させられてクビ切られた殿様の仇討ちを決心した家来どもが「殿様はハメられた!」「幕府の裁定はサイテー!」「吉良上野介にゃあ参った!」ってなゴシップ記事まがいの噂を流し、相手方を徹底的に「悪者」に仕立て、世論を味方につけるという情報戦略の上で、実行したという解釈に基づく。

 それを計画したのが大石内蔵助・高倉健、というところの説得力がイマイチなんだけど、ま、それはともかく。

 本作品最大の特徴は普通のチャンバラ映画じゃない、ってことじゃないですかね。かの「十三人の刺客」の脚本家が原作だというのも納得できるし。第一、まともにチャンバラできる役者がひとりもいないんだから当然ですけども。

 この映画では発端となった松の大廊下の原因はついに登場人物たちの口からは説き明かされない。せっかく喋ろうとした吉良上野介・西村晃を「聞きとうない!」って言って大石内蔵助が殺しちゃうんですもの。あっ!健さん、そりゃないよーっ!て思わず叫んでしまいましたね、私は。

 面白かったのは、上杉家の用人、千坂兵部・森繁久彌の懐刀、色部又四郎・中井貴一と、柳沢吉保・石坂浩二の暗躍。だって、その中井貴一のメイクが、はっきり言って辻村ジュサブローの人形(辻村ファンの皆様、ごめんなさいねえ)みたい、あるいは出来損ないの隈どりみたいで、すごーーーく変なんですもん。無理やりな悪役の石坂浩二も笑ったし、もちろんこの映画の数年後に大河ドラマで吉良上野介演るとは本人も客もてんで思ってなかったわけですけどね。

 で、話を中井貴一に戻すと、なんでアンタそんなに力み返っておるの?というくらい力入っちゃってて、時代劇らしい作法、立ち居振るまいに一生懸命なのは分かるけど、大石主悦を演った本職の尾上丑之助クンと比較しちゃうと月とスッポンだしぃ。でもさあ時代劇映画に新国劇や歌舞伎の俳優さん出すのって反則よねえ、ツリアイとれないもん、周りが。だって訓練の度合が違うでしょ?梨園の人は時代劇の所作が遺伝子情報に組み込まれておるからねえ。

 で、話を中井貴一に戻すと(ひつこい?)、この人も権謀術数の人には到底見えないのよね、高倉健と同じくらいに。

 この映画の大石内蔵助は女性にモテモテ。同世代の妻、りく・浅丘ルリ子、娘みたいな、きよ・黒木瞳、んで孫娘くらいの、かる・宮沢りえ。もう片っ端から、です。いや、ちょっと下品な言い方でしたね。もちろんアプローチするのは高倉健ですから基本的にはプラトニック、でも結果的にはプラクティカルに子供ができちゃうわけですけどもね。

 討ち入りのシーン。実際でも5時間くらいかかってたんでしょ?ぶっ続けなのかと思ってたら、ちゃんと途中でご飯食べたりしてたんですね。選手も時々入れ替わったりして、当然、刀もボロボロになるから取り替えたりもしてたらしい。勉強になりますなあ、実際。

 「忠臣蔵外伝・四谷怪談」でもそうだったけど、様式美を求める時代劇に小林平八郎・石橋蓮司を使うのは止めたほうがイイんじゃないですかね。本人も自分をもてあましてる感じがするし、もっとほかに使いどころがあるでしょ?という感じになっちゃっててモッタイナイと思うんだけどなあ。つまり、その、サーヴィスしすぎなところが、ね。

 本題に「忠臣蔵」と言わない「忠臣蔵」映画。異色だけど、今まであまり描かれなかった部分の生々しさがあって面白かった。ただ何度も言うけど、様式美を求める人は確実にこの映画をペケにするだろうね。つまりそういう映画じゃないってこと、事前了承の上で観ないとガッカリするぞ。ま、キャスト見てわかんない客のほうがペケって感じ?

 ようするに「高倉健の忠臣蔵」ってことなのよ。

 不破数右衛門・岩城滉一、堀部安兵衛・宇崎竜堂、いつから赤穂浪士はゾクのチームになったんじゃい!と怒った観客数知れず。まあそれも時代のなせるわざってことで、はい。

2000年02月11日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16