「日本映画の感想文」のトップページへ

「サイトマップ」へ


喧嘩鴉


■公開:1954年
■制作:松竹
■監督:堀内真直
■助監:
■脚本:堀内真直
■原作:
■撮影:
■美術:
■音楽:
■主演:高田浩吉
■備考:二大スタアによるワンマン映画。


 旅人の伊太郎・高田浩吉と新三・高橋貞二は幼馴染み。歌が得意で喧嘩も強い伊太郎に対して、絵が上手なだけが取り柄という新三は、ちょっとしたイザコザから伊太郎と別れて、悪玉親分・沢村國太郎の客分となる。伊太郎は土地の代官に取り入った悪玉親分によって縄張りあらしをされてしまった善玉親分に世話になる。

 伊太郎は自分の初恋の人のためにやむをえず斬った相手の身内に付け狙われていた。 新三は、恋人のお銀・山根寿子を代官に差し出そうとした悪玉親分一家にさっさと愛想を尽かし伊太郎に協力。二人で悪玉親分をやっつけて、また仲良く旅を続けるのであった。

 歌って踊れてチャンバラもできる高田浩吉のワンマン映画。一応、高橋貞二との二枚看板だが、演る前から勝負は見えていた、と言うか、どういう経緯でこの映画の企画が決定したのか関係者に聞いてみたいくらいだ。それほど高橋貞二は高田浩吉の引き立て役以上のなにものでもないので、見ているほうとしてはなんか気の毒になっちゃう。

 別に高田浩吉がエバってるとかそういうことはなくて、この映画でも歌いまくりの踊りまくりという相変わらずの大サービスなんですけど、つまり、高橋貞二には「おおらかな二枚目」というキャラクター以外になんの芸も無いので、結果としてどうでもイイ存在になってしまったんでしょうね。

 それで本人がクサってるかというと、実はヘコんでたのかもしれませんが少なくともスクリーン上では「俺は俺」という感じで実にサバサバしてます。「俺は絵で身を立てる」と言った舌の根も乾かないうちに「俺は根っからやくざだから」とかなんとか言って山根寿子を捨てようとして、やっぱり別れられないという現代っ子ぶりを大爆発させるので、一昔前の二枚目である高田浩吉と絶妙のバランスが生まれていたような気がしました。

 若くてフレッシュなところは、善玉親分の娘・野添ひとみと若衆・田浦正巳のカップルが占領しているので、高橋貞二としてはますます活躍の場が無かったですね、歳も歳だし。ところで田浦正巳って少女漫画に出て来る「王子様」そのまんまの顔だちなので、カツラが全然似合いません。この時代の人にしては信じられないくらいのアイドル系です。

 そんでやっぱり美味しいところを全部もっていったのは大前田英五郎・近衛十四郎。歴史に名を残す大人物の役どころで、出て来ただけで相手がビビるという、まるで丹波哲郎先生のような押し出しの立派さで、出場の少ない割りには印象に残るというまことに素晴しいご活躍。しかも役者自身が、役どころやポジショニングにまったくとらわれず、登場人物の中でずばぬけて堂々としているので周りはただただ圧倒されっぱなし、主役の高田浩吉ですら、です。この上チャンバラまでやっちゃったら完璧に高橋貞二が「飛ぶ」ところでしたね、作り手にもそのへんは読めたっていうことでしょう。

 ラストシーンで、高橋貞二の後を追ってきた山根寿子が加わって仲良くドリカム状態になるのかと思ったら高田浩吉がとっとと逃げ出してしまうところが爽やかな後味でした。最後まで影の薄かった高橋貞二はこの映画の後、しばらくして交通事故死してしまいます。そう思うと余計に気の毒ですけどね、これも昔の映画を見る寂しさですね。

2000年02月11日

【追記】

※本文中敬称略


このページのてっぺんへ

■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16